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表現は思いから生まれる

 

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想像=現実の知覚に与えられていない物事の心象(イメージ)を心に浮かべることで、過去の体験を再現する「再生的想像」と過去の経験を組み合わせて新しい心像をつくる「創造的想像」とがある。

 

造形活動は色や形・質や量・位置等を変化させる活動ですが、造形表現は自分の思いがそれに加わっています。思いがないと表現は生まれません。

思いの発生

○想像からの発生

日常生活で起こるさまざまな体験の中で、感じたり、考えたりしたことが動機となってイメージを想像し、その想像から表現への思いが生まれる。

○材料からの発生

造形材料には線材・面材・塊などいろいろとあるが、それらを見ながらそれぞれの特性を生かした表現への思いが生まれる。

○操作からの発生

造形操作(造形行為)は色や形や塊を変えていく基本的なことで、材料・用具の扱いや技法・機構などがある。これらの造形操作から表現への思いが生まれる。

 

伝達の二要素

表現には自己伝達と他伝達があります

表現とは、本来自分の内部に発生した「心の思い」を何らかの形で外部に表すことで、教師や友だちの思いを表現することは真の表現とはいえないでしょう。自己表現という言葉がありますが、子どもたちの造形表現活動は自己表現なのです。

では、なぜ心の中の思いを外に表したいのでしょうか。それはきっと誰かに伝えたくてしかたなかったからでしょう。

このように考えると、表現には伝達性があります。伝達は「自己伝達」と「他伝達」の2つの要素をもっています。自己伝達は「これでよいかな、これでよい」と自分自身に思いを伝えることです。他伝達は「ね、見て。」と相手に自分の思いを伝えることです。したがって、子どもたちが絵をかいたり、ものをつくったりしているときは、自己伝達しながら他伝達していることになります。

 

表現の指導3つのポイント

1] 思いを発生させるためのきっかけづくり

何もないところでは思いは発生しません。何らかのきっかけを与え、表現への興味・関心・意欲をもたせることが大切です。しかしその根底には教師が児童を理解し、児童が教師を信頼するという人間関係があり、そこから表現は生まれるのです。

2] 表現を通した思いの伝達活動

思いが発生すると表現活動が開始されます。この場合、放任しないで活動の様子を見守りながら、必要に応じて指導しなければなりません。この指導はあくまでも児童の表現のためのものですから、支援的な指導に心がけることが大切となります。

3] 子どもの思いの共感的な理解

表現活動は結果的な作品も大切ですが、表現のプロセスも大切です。あらゆる場で共感的理解を深め、思いを受け止めてあげましょう。そのことが表現の喜びを高め、満足感を充足し、さらには教師への信頼感を深めてくれます。

 

 

 

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