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しかし中国やブラジルなどさまざまな地域から来日する人々との共生を考える場合、たくさんの文化が同時に存在するとき、互いにどう行動すればよいのかという「多文化共生」の視点が重要となってくる。

ワークショップやディスカッションなどの手法で異文化理解や多文化共生への認識を深めてゆくことと、国内・海外の他の先進的な事例を見学したり、複数の園で新しい取り組みを開発・研究してゆくことが望まれる。

 

(3) 専門性を活かした連携を

一昨年あたりから、外国の童謡を集めた教材はないか、世界の手遊びを教える教材が欲しい、といった問い合わせが多く、多文化共生センターでは五言語・十五曲の童謡を集めて譜面とCDを一年かけて作成した。制作にあたって調べてみると、世界の童謡や手遊びは「研究用に」集められた資料が大学の研究室などにたくさん眠っているが、これを保育の教材として開発したものはきわめて少ないことがわかった。保育者、外国人問題の専門家、童謡や手遊びの研究家、それぞれが専門知識をもちよって連携することが、多文化共生の保育を豊かにするために必要である。

小・中学校では日本語指導が必要な生徒・児童のためのセンター校を設けているが、保育の現場でも外国人を含め、多文化共生を専門とする保育者がいる指定園を設け、他の園からの相談にも応じるといった対応が必要だ。また、外国人の子育てについては外国人自身が詳しいはずである。地域で暮らす外国人や海外からの研修性も含め、外国人保育士の採用をもっと積極的に考えるべきだろう。

 

以上、三点の問題整理と対応への提案を行なったが、入園児のオリエンテーションや、健診、予防接種といった母子保健領域での多言語化(書類の翻訳や通訳の派遣)が、こうした取り組みの前提として必要なことを、最後に付記しておく。

 

 

 

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