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わからないことは知る、無いものは創る

―外国人保育の問題点とその対応―

 

多文化共生センター

代表 田村 太郎

一九九○年代になって加速している日本で「暮らす」外国人の増加は、二○○○年以降も継続しそうな気配である。日本だけでなく、世界中で国境を超えた人の移動が勢いを増しており、多文化・多民族の共生は人類共通の課題となっている。

一方、日本における多文化共生の保育は、熱心な保育者の取り組みにより、充実したものとなりはじめている。今後はこうした取り組みを全国で定着させていくとともに、文化のちがいだけでなく保護者の生活形態も視野に入れて、外国人の子どもたちを取り巻く環境を改善していく必要がある。また日本人保護者へ異文化理解や多文化共生の必要性をどう伝えて行くのか、といった視点からの新しい取り組みも必要であろう。課題と対応についてまとめてみた。

 

(1)外国人の子どもたちを取りまく環境を知る

外国人保護者、とりわけ一九九○年代以降に来日した世帯の生活は、日本人の保護者と比較して一般に安定しない。南米出身の人の多くは派遣業者を通しての不安定な雇用関係にあり、自分たちの生活を優先させると容易に解雇されることがある。また中国出身の人も日本語の問題などから就労機会が限られており、雇用を優先せざるを得ないため、保育に充分な時間と関心を割けない。こうした事情をよく知らない保育者や他の保護者は、外国人の保護者が子どもに対して冷淡で、愛情をそそがないという偏見をもちがちである。

また、日本人との結婚が多いフィリピンやタイの女性の場合、子どもが日本文化しか継承しないため、家庭内で自分だけが外国人となり、孤立してしまうことがある。結果として母親にストレスがたまり、保育に悪影響を及ぼしたり、家庭の崩壊につながってゆく。

保育者が外国人世帯が置かれている現状を知り、他の保護者にも正しく(かつ、楽しく)伝えていくことができないだろうか。たとえば、多くの保育の現場で保護者からの母国の文化を紹介してもらう取り組みが行なわれているが、そのときに少し時間を割いて来日までの経緯やこれまでのライフヒストリーを語ってもらい、他の保護者が話しを聞ける機会をつくるとか、日本人の世帯と外国人の世帯が相互に家庭を訪ねるホームビジットを企画するといった、外国人の子どもたちを取りまく環境を知る取り組みが期待される。

 

(2) 異文化理解・多文化共生についての学習会を開く

異なる文化背景をもつ人とのコミュニケーションでは、文化とは何か、文化が異なるとはどういうことか、文化が異なる中で生活するとはどういうことなのか、といった「異文化理解」の基礎について学習することで、目からウロコをボロボロと落としておくとよい。

また、一九八○年代までの「外国人問題」とは、ほとんどが在日韓国・朝鮮の人々が抱える問題をさしてきたので、朝鮮の文化や歴史を学ぶことで解決がみられた。

 

 

 

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