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小児の感染症対策

平山宗宏(母子愛育会・日本子ども家庭総合研究所)

 

小児の感染症対策としては、一般の場合同様、1]感染源対策、2]感染経路対策、3]感受性者対策の三原則に変わりはないが、とくに集団の場における対策が重要になる。そこで、以下にいわゆる学校伝染病と出席停止の考え方を中心に解説する。

 

1. 小児の集団において予防すべき感染症

 

百年前に制定された「伝染病予防法」が、新たに「感染症の予防と感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症予防新法」)として平成11年4月から実施された。新法は新興感染症や再興感染症など最近の世界的な感染症の動向と世界の交通事情、さらには医療の進歩を踏まえたものである。また同時にライ予防法やエイズの出現に伴ったいわれなき人権の侵害を反省する旨の前文がつけられており、新法では伝染病の用語を用いず、すべて感染症で統一し、また表1のように分類し、治療や報告の基準を定めている。

この伝染病予防法の改正に連動して、文部省管轄の学校保健法の施行規則の「学校において予防すべき伝染病」(いわゆる学校伝染病〉も改正され、平成11年4月から改正された。ただしこちらでは伝染病の用語が残されている。

医学用語としては、病原体によっておこる疾病・異常が感染症であり、感染症の中で人から人にうつる疾患が伝染病である。また、学校で、すなわち小児の集団生活の場で流行を予防すべきなのは伝染病なので、学校保健法では伝染病の用語を用い続けている。

その内容は表2のごとくである。従来の分類を「類」から「種」に改めた。

第一種は感染症予防新法の一類と二類の感染症であり、これらは原則入院治療なので、出席停止の期間を退院可能になる「治癒するまで」とした。

第二種は従来から学校伝染病の第二類を踏襲しているが、分類としては学校の場で流行しやすい飛沫感染をする感染症として整理し、結核を旧三類から移籍した。出席停止期間は従来の考え方を踏襲しており、要は咽頭等で病原体が増殖し、飛沫感染しやすい期間としている。糞便中に病原体が排泄される経口感染は、手洗いの励行などの注意で他人への伝染は予防できるので、第一種伝染病以外では出席停止期間には含めていない。

第三種は経口感染である三類感染症の出血性大腸菌感染症と従来からの眼の伝染病2つを残し、その他の伝染病も残した。その他の伝染病の病気の種類と出席停止期間は従来から現場で問題となっていたが、規則の中に数多い小児期の伝染病を明示することは困難なため、従来通り「その他の伝染病」という表現を残し、文部省が医療関係者用と学校関係者用の二通りの解説書をつくり、判断基準を示すことで混乱をさけることとした。

 

 

 

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