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第1章  はじめに

 

1-1 JoyProject活動の背景と成果

 

(1)背景

 

一市民が国を動かすことなどできるのだろうか。

我が国では非常に困難なことのように思われる。

JoyProjectを立ち上げた1995年3月時点では当事者も、専門家も多くの人達が「途方もないことを思いついたものだ」「そんなこと出来るわけないだろう」「無謀以外の何ものでもない」概ねこんな反応が主流であったように思う。

しかし、重度の障害を有し、車の運転を諦めきれない人達の間では、「無理だとは思うけれど、何とか実現してほしい」との期待感が伝わってきた。

どちらかと言えば、「無理」だと思う気持ちの方が強いのだが、しかし何とか「実現」してほしいとの切ない気持ちが伝わってきたのである。

スタート時点では、何の成算もなかった。ただし「思い入れ」を具体化するためのシナリオはしっかり出来ていた。

第1に過去の障害者運動では「戦術はあっても戦略が欠けている」との思いが強かったので、まず戦略を重要視した。第2に「脱福祉」を目指した。これも過去の福祉活動の経験から、我が国の福祉感はあまりにも矮小化されていると強く感じていた。様々な問題が、我が国の歴史と文化に根ざしている以上、福祉という狭い世界で解決できる問題ではないと思っていた。そこでジョイプロジェクトは、当初から「社会に対して責任と使命を持って活動する団体」を目指した。第3に、JoyProjectはプロフェッショナル集団を目指した。様々な分野のプロを集めることによって起こり得るあらゆる問題に即応体勢を持てるようにした。同時に重度障害を持つ当事者の視点による物造りをも目指した。

したがってスタート当初は活動を主たる目的とした「JoyProject」と、研究開発を目的とした「JoyProject研究所」と、二つの目的を持った団体としてスタートした。しかし、「ジョイスティックコントロールカー」の認可に取り組むために必要なエネルギーは、「研究」を継続することを許さないほど大きなものであった。発足2年目から研究開発活動は一時お休みとなり現在に至っている。JoyProjectにとっては「当事者の視点による物造り」も重要な課題であり、今後とも視野に入れて継続したいと考えている。

 

(2)JoyProjectの活動成果

 

これまで、自分の力で車椅子から運転席に乗り移りの出来ない人達は、自動車運転免許の取得をあきらめざるを得なかった。しかしJoyProjectが『電動車椅子ごと乗り込み、ジョイスティックコントロールでも運転できるミニバン』の認可を取り、『ジョイスティックコントロール免許』を取得し、メディアその他を通じて広報し続けたことで、多くの人達の心の中に社会参加への『夢』と『希望』が確実に膨らんだことが10,000人アンケートの集計結果に現れた。

5,000人を越える人達が氏名及び住所を明記し、回答して下さったのは、とりもなおさずJoyProjectに『夢』と『希望』を実現するために、さらなる活動を展開することを期待しているものと受け止めている。

 

 

 

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