日本財団 図書館


第5章

行政機関におけるリエンジニアリングの課題と検討

 

リエンジニアリングにより多大な成果を挙げている民間事例に比類するような事例は、行政機関において見いだすことは難しい。実際には、事例調査にもあるように、予算の積み上げを電子化することにより大幅な業務の効率化を達成したり、グループウェアにより職員間のコミュニケーションの充実や情報リテラシーの向上を達成した事例はあるが、いずれも情報化の成功事例であり、業務体系を含めた根本的な改革により著しい効果を挙げている民間企業のリエンジニアリング成功事例とは異なるものである。

ここでは、行政機関においてリエンジニアリングの事例が見いだしにくい原因について検討し、その問題点、課題を明らかにすることとする。

 

5-1 行政機関における「競争」について

 

企業がリエンジニアリングを行わなければならない環境を作り出す3つのCの力である「顧客(Customer)」「競争(Competition)」「変化(Change)」については、1章で述べた通り、「顧客(国民、住民)が主導権」を握る状況及び「絶え間ない環境変化」に関しては行政機関にも当てはまるが、「競争の激化」に関しては行政機関に関しては当てはまりにくい。

 

(1) 組織間の競争

特許庁の事例では、「顧客」である国内企業の知的財産権部門や研究者が欧米の特許庁にも特許出願を行うことも少なくないため、自然と欧米の特許庁とのサービスの比較が行われることが、積極的に業務改革を推進する大きな要因となっている。しかし、多くの省庁や地方公共団体では、同じ事業分野において明確な競争相手が存在していない場合が多く、各事業間で顧客(国民、住民、企業等)のより高い評価を得るための競争は起こりにくい。

民間で行われている「都道府県の住みやすさ」等、何らかの基準に基づく地方公共団体間の比較評価は、地方公共団体に競争意識を持たせ、評価が低い分野の行政サービスの改善や施策の充実を推進する要素となる可能性はあると想定される。しかし地方公共団体では、税収規模、職員数、庁舎・出張所等の数等の違いにより、行政サービスの向上に投入できる予算や職員は大きく異なるし、都道府県市町村の面積、人口密度や分布、昼夜間の人口流動等により、予算の投入による期待効果も異なる。また、首長の考えにより、力点が置かれる施策分野が大きく異なるため、地方公共団体を一律に評価できる基準を設定することは難しい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION