(1) ICカード内のサービスの独立性
ICカードのメモリ領域内に記録されるファイルは、これらの読み出し、書き込み等ファイルヘのアクセスを管理する仕組み(鍵の設定)を設けることができる。これによって、一枚のICカードを複数の業務サービスに使用する場合でも、業務サービスごとに異なる鍵の設定・管理を行えば、特定の業務サービスでICカードを利用する場合に、他の業務サービスに関わるファイルを読み出したり書き換えたりできなくすることができる。ただし、この場合カードの利便性やセキュリティについては十分考慮する必要がある。つまり、ICカードに新たにファイルを追加する場合には、従来の仕様のICカードでは、任意の業務サービスに影響を与える鍵が設定可能であるため、サービス業者が故意に他の業務サービスのファイルを盗視、改ざん、消去することが可能となるからである。このため、多目的ICカードとして使用するICカードでは、既存の業務サービスのために生成されたファイルに設定されたアクセス権が侵されるような鍵の設定をICカード自身が許可しない機能を有する必要がある。
(2) 業務サービスの削除
従来のICカードでは、一枚のICカードに一つの業務サービスのみを想定して、ICカードが発行されるため、生成したファイルを削除する機能を必要としなかった。しかし、枚のICカードを多目的に利用するには、不必要となった業務サービスを除去し、代わりに他の業務サービスを利用できるようにすることが望ましい。したがって、多目的ICカードでは、一つの業務サービスに関わるファイルを登録する領域であるDFを単位として、ファイルを削除し、削除したファイルの領域に他の業務サービスに関わるファイルを登録できる機能を持たせることが望ましい。
(3) 非接触型ICカードの利便性
多目的ICカードでは、従来のICカードに比べデータの読み出し/書き込みの頻度が極めて高い。したがって、従来の外部端子付ICカードのように、読み出し/書き込み装置の接触ピンとの機械的な接触により、機械的な破損による故障、長時間にわたって使用する場合には汚れ等による電気的接触不良、さらに屋外で使用する場合の埃や雨水などによる傷害が懸念される。したがって、多目的ICカードにおいては非接触型のICカードを使用することが望ましい。非接触型のICカードは、電磁誘導によってデータ通信を行うところから端子を必要としない上、特に、国際規格ISO/IE 10536に準拠した密着型ICカード(2ミリ程度の距離を離す)は、外部端子付ICカードに関する国際規格ISO/IEC 7816シリーズとソフトウェア面での互換性がある。さらに、暗号方式においても、DES方式、RSA方式に対応可能である。