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§7. 生物学的環境修復の実施に際しての考え方と留意事項

 

この小冊子では、海上油濁事故における油濁対応の選択肢の1つとしての環境修復に限定してまとめます。

生物学的環境修復の良いところは、自然の景観を損なうことなく静かに行える、そして廃棄物が殆どできないということです。このことは非常に魅力的です。しかし油の種類によっては分解が難しいものもあるし、浄化に時間がかかるという問題もあります。またセンシティビティマップ(Sensitivity Map:沿岸環境脆弱性地図)の記述に基づく制限も考えられます。従って権威ある専門家と行政機関との連繋ある計画立案に基づき、実施されるべきものと考えます。

また適用される地域の特性…遠浅の砂浜、玉石の海岸等、…も千差万別ですので、これが“標準”という作業基準(Standard Operating Procedure)は一義的に決めることは難しいと思います。従ってここでは修復作業の実施に当っての留意事項をまとめておくに留めます。

 

1. 生物学的環境修復導入前の留意事項

 

・ 責任の所在の明確化

・ 現地調査

・ 適用場所・適用手法の選定(参照地域の選定を含む)

・ 適用計画の立案(費用推定、アセスメント計画、フォローアップ計画を含む)

・ 適用資機材の安全性確認

・ 届け出等の手続き

・ 関係者への説明と協力要請(現地住民、漁業関係者を含む)

・ 要員の確保

・ 資機材の調達

導入前のポイントは誰が実施の責任者か、計画は妥当なものか、費用の負担者は誰かということに置きます。これらを曖昧にしたまま作業に入りますと、不時のトラブルに対処しきれなくなることがあります。場合によると保険をかけておいたほうが良いことも考えられます。また効果ある作業を行うためには、分解細菌の増殖の度合い、栄養分濃度・溶存酸素量等のチェックが必要になりますので、然るべき公立試験所、大学研究室等とのコンタクトも必要になります。

 

 

 

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