§6. 生物学的環境修復と法律との関わり
まず最初に述べなくてはならないことは、1998年末現在では、わが国には生物学的環境修復そのものに直接関与する法体系はないということです。もちろん、間接的に関係する法律等はありますし、行政立法機関での検討も進んでいるものと思います。
法治国家にあっては納得性の高い法律の制定とそれを守ることと、影響を受ける大多数の人々に不都合が認められたならば、それを解決するための法律を創ったり改正する努力が必要であります。生物学的環境修復に直接関与する法律等が早く整備され、安心してその枠の内で実施できるように見守りたいと思います。
ここでは、現存の関係ある法律および行政のガイドを中心にまとめてそのポイントを示したいと思います。
「油濁に対する生物学的環境修復」という概念が現行の法体系に含まれていないとすれば、何が生物学的環境修復の手法を律するものになるかを考えれば間接的に影響を及ぼす法律の数々が浮かび上がってきます。
(1) 生物学的環境修復の手法の適用そのことに何らかの影響を与えるもの
関連する法律には次のものがあります。
1] 自然環境保全法 制定1972.6.22 改正1993
2] 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保全に関する法律 制定1992.6.5
これらの法律は、自然環境の見地から国、または地方自治体が定めた特定の地域に関するものですから、「手法」そのものを認めるか否かを律するものになり得ます。また、認めるとしても「手法」の実施までには何等かの手続きが必要になります。
(2) 生物学的環境修復の手法に派生して生ずる事象に何等かの影響を与えるもの
関連する法律には次のものがあります。
1] 水質汚濁防止法 制定1970.12.25 改正1993
2] 海洋汚染及び海上災害防止に関する法律 制定1970.12.25
3] 水質汚濁に係わる環境基準について 環告59 1971.12.28
4] 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
これらの法律は「手法」を適用した際、微生物に与える栄養分(肥料等)の海洋及び海洋への投棄、水質の劣化、富栄養化等が可能な規制対象になり得ます。また、適用した水域の所定の水質の測定、報告をも求められる可能性もあります。