§5. 生物学的環境修復を取り巻く環境
1998年末現在の生物学的環境修復を取り巻く環境を、国民の意識、行政のスタンス、及び国際的な視点より概観し、今後の方向づけを述べてみたいと思います。
1. 国民の意識
ほとんどの人は、納豆は納豆菌、ビールはビール酵母、味噌はコウジカビで作られることは知っています。しかし当たり前すぎて、自分の身体の一部のように気にもとめません。一見変わった(と言ってもそれほど変わったものではないが)コンポスターによる生ゴミ処理でも、今まで世に広く知られていなかったことなので最初は、戸惑いがありました。しかし、農業関係の人が、またゴミ問題で悩む行政の人達が勉強して、その有効性を説いてからは、そこそこ定着してきています。
ここで何が言いたいのかというと、自動車や家庭電化製品のように明らかに便利で効果のあるものは、その仕組みがわからないでも取り入れるが、それ以外のものは良いとわかっていてもなかなか取り込まない効利的保守性の存在です。
もう1つは、細菌→病気というような短絡的な恐怖心の存在です。更にこれらに追い討ちをかけているのが、情報公開の不透明さに対する猜疑心でしょう。
正確な統計はありませんが、生物学的環境修復、バイオレメディエーションという言葉を知っている人は、1万人に数人位ではないでしょうか?更に、少しでも内容を知っている人はそれよりも少ないはずです。今後、多くの人達に言葉を、そして内容を知ってもらうには、生物学的環境修復をわかりやすく、良い点、悪い点(もしあれば)を十分に説明する努力を続けるより方法はありません。しかし、それ程難しいものとは思いません。生物学的環境修復といっても、家庭でできる生ゴミ処理の延長線上のできごとですから。
2. 行政の取り組み
現時点での政府の態度としては、端的に言って「バイオレメディエーションという方法があることは承知しているが、油濁対応の体系には未だ、組み入れるには至っていない」ということのようです。そして、体系に入れる前の実証試験等についての具体的な指針、基準等は未だ示されていません。