はじめに
この冊子を手にして中を開く方は、「生物学的環境修復手法あるいはバイオレメディエーション」というこの言葉、初めて見、聞くのではないでしょうか。今ご覧になっているあなたは、どのような状況でこの冊子を開いているのですか。
まずは、この冊子をご一読ください。
平成9年1月2日、隠岐諸島沖合いにおけるロシア船籍タンカー、ナホトカ号の重油流出事故は、日本海沿岸域を広い範囲にわたって重油で汚す、大きな災害となりました。この重油を取り除くために、バキュームポンプなど機械力による回収、人力によるすくい取り等の物理的な方法等が行われました。また、この時に、最近海外で流出重油の処理にも使われ始めた微生物により汚染油を分解する生物学的環境修復手法(バイオレメディエーション)が、一部で実験的に行われました。
生物学的環境修復手法の取組みについては、世界的にみても日が浅く、約10年くらい前からシステムとしての検討が始められたに過ぎません。わが国でも研究報告や講演については数をみるようになってきましたが、いまだ、一般的な解説書もなく、広く知られていないのが実状です。
生物学的環境修復手法は、生物の生態を利用して油の分解を促進する方法であり、時間を要することから、機械的回収等の通常の手段で、でき得る限り海岸部の漂着油を回収などした後、さらなる浄化を行うための補助的手段としての選択肢の一つであると考えられます。
ところでわが国では、この手法の有効性、環境への影響などの実証試験は行われていないのが現状であります。しかし、日米政府の間では、1997年に、その技術の共有について合意がなされています。今後、生物学的環境修復技術の基礎研究により、有効性、環境への影響などの評価システムを確立する必要があります。
一方、油による汚染に際しては、海岸地域の人々が、それなりの知識を身につけていることが大切です。ナホトカ号事故の教訓を活かし、油汚染事故の対応において選択肢の可能性のある生物学的環境修復手法を、広く皆さんに理解してもらうために書かれたものがこの冊子です。
この冊子は、日本財団の協力を得てできたものです。日本財団とこの冊子の作成に協力をいただいた「生物学的環境修復手法の社会的コンセンサス形成の調査研究」検討委員会の方々に感謝します。
平成11年1月
財団法人 未来工学研究所