それぞれの人の顔が違うように、体の中も大きく違うという事実も僕を驚かせた。神経や血管は一人として同じという人はいないばかりか、時には教科書に載っていない筋、神経、血管、臓器等を持つ人もいる。教科書的な知識だけでは役に立たず、それが何なのか、時には発生の段階までさかのぼって考えなければ分からない。それはとても難しいことであった。
解剖学実習は亡くなられた方が相手であるが、医者という職業は生きている人が相手である。亡くなられた方でさえ多種多様で難しいのに、医師はもっと多種多様の症例や人格を持った人を相手にするのである。教科書には載っていないことばかりであろうし、その度に適当な処置を取らなければならない。医者という職業の大変さを改めて知ると共に、自分にその職業がこなせるだろうかと言う不安が今までより大きくなった気がする。
この実習からは、多くの知識だけではなく、医者として大事な事を多く学んだと思う。御遺体が教えてくれたこれらのことを活かしていけるようにこれからも頑張りたい。
解剖学実習を終えて
橋倉 志乃ぶ
医学部に入学した当時、私の医学部へのイメージは、解剖学実習でした。解剖学の教科書に載っている人体の図を見て、実習すれば本と同じように見えるのだろうと思っていました。