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毎日予習をするのも習慣になり、毎日が充実していました。それでも、その日のノルマを終えることが出来ず、休日まで食い込むこともありました。

実習中、最もうれしかったことがあります。毎日、実習の始めには、「今日もよろしくお願いします。」終わりには「ありがとうございました。」と御遺体に向かって心の中で挨拶をしていましたが、そのうちに御遺体に親しみがわいてきたのです。仲間意識というか、共に実習を進めて行く貴重な一人の班員のような気がしてきました。御遺体の表情も、始めは、恐る恐るのぞいていた感がありましたがそのうち、じっと見つめられるようになりました。時によって平穏な表情であったり、痛そうな表情であったりと、こちらで勝手にそう思っているだけなのでしょうが、なんとなく、ご遺体の気持ちが生きていると感じました。

実習も終盤になると、一度きりのこの体験を無駄には出来ないと、さらに真摯な気持ちになれました。そして最後まで、人体の神秘に驚きと感動を覚えつつ実習を終えました。しかし、まだまだ見逃したもの、剖出できなかったものがあるので、これからも勉学に励むことで補っていきたいと思います。

最後に、私達の実習を親身になって支え、正しい知識を私達に教えることを惜しまなかった先生方に心から感謝します。

私は献体して下さった方の気持ちに少しでも近づけるように、人間的に成長していきたいと思います。本当にありがとうございました。

 

 

 

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