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医師とは、生と死を常に意識せざるを得ない立場にあるのだと改めて感じた。時にそれは苦しいことでもあるように思われる。しかし逆に、自分が生への畏敬を持ち続けてさえいれば、生の素晴らしさに何度でも感動できる存在にもある。実習を通して、自分の進みたい方向が見えたような気がした。

解剖学実習とは、実に特殊行為だと思う。実習中、自分の姿を客観的に眺めようとして、事の重大さが恐ろしくなったり、その方に申し訳ない気持ちがしてつらくなることが多かった。それでもやはり、実習で得られた数々の新鮮な驚きをうれしく思い、貴重な機会を与えて下さった方々に深く感謝している。ありがとうございました。

 

解剖学実習を終えて

武田 いづみ

十月六日から始まり、十二月十八日をもって終了した三十回にわたる解剖実習は、終わってみると本当に短かったように思います。しかしその内容は、とても密度が濃いものでした。

医学というものに対し、ほとんど知識がない状態からの始まりだったので、はじめは解剖実習に対し、本当に自分にやり遂げることができるかどうかという不安でいっぱいでした。実際、解剖開始当初は、要領もうまくつ

 

 

 

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