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解剖学実習を終えて

横濱 玉器

私にとって解剖実習の最初に感じた驚きととまどいは忘れることのできないものとなりました。ご本人とご家族の方々のいろいろな思いがあって献体という選択をして下さったことを考え、解剖実習中はできるだけ多くのことを吸収しなければならないと強く思ったことを覚えています。教室での教科書と図解の講義では、細部がわからないことがありましたが、実習が始まり自分の目と手を使って立体的に確認することができ、臓器の部位や関連のある血管、神経、筋肉のつながりを理解することができました。人体は細部までひじょうに良くできていると思いました。地球が約四五億年前に誕生してから無機物が有機物になりただのタンパク質が次第に細分化し二五〇万年前にはもうヒト型にまで分化して、さまざまな機能を得たことに驚異を感じました。人間が今まで生き残ってくるために一体どの位の生理的機能を発達させたのかを考えると想像もできないほどの長い年月に気が遠くなります。献体された方々も生まれてから死を迎えられるまでの何十年という人生があり、いろいろな人と出会い、いろいろなことがあったのだろうと思うと、これからも続いていくであろう時間が貴重に思われ、大切に過ごしていかなければならないと感じました。

 

 

 

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