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6. 内容等

日本医歯薬アカデミーフォーラム医歯薬領域における学術と産業─創薬と治験をめぐる諸問題を中心に─

日本学術会議第7部幹事  遠藤 實

平成10年11月19日(木)日本学術会議講堂において標記のフォーラムが開催された。このフォーラムは、日本学術会議第7部付置の治験問題検討小委員会における討議の中から計画され、第7部及び医歯薬アカデミー主催として実現したものである。杉本恒明関東中央病院長と私が司会を務めた。

冒頭の金岡祐一第7部長の挨拶に続いて、渥美和彦鈴鹿医療科学大学学長が欧米とわが国の医学生命科学領域の大学や企業における学術研究の現状について比較分析され、わが国の状況には考えるべき点が多いことを指摘された。次いで、創薬・治験の問題点について、3名の演者にそれぞれの立場からお話し頂いた。衣非修武田薬品工業取締役は、製薬企業の立場から問題点を整理し、創薬について日本の企業は実績は相当あるが、今後、基礎力の増強、適切な研究評価などが重要であること、治験について新GCPに即応できる体制を作るため基盤整備が必要であることなどを指摘された。大塚正徳東京医科歯科大学名誉教授は、学術の立場から主として創薬について自らの経験を交えながら、新薬の必要性は高くその開発は夢でもある、産学協同はもっと推進すべきであり、国としても積極的に創薬科学を支援すべきではないかと提言された。平井俊樹厚生省医薬安全局審査課長は主として治験について、新GCPの実施に関する駒込病院と聖マリアンナ医大のモデル事業、治験推進検討会で検討された問題点、新薬承認審査についての実情など、行政側の努力と現状について話された。休憩後の後半は、治験の実際的諸問題について3名の演者にお話し頂いた。堀正二大阪大学病態情報内科学教授は、大阪大学での経験に基づいて治験の実施に当たっての種々の具体的な重要点を指摘されるとともに、わが国の治験を含む臨床研究の現況についての強い危機感を表明された。小出五郎NHK解説委員は治験を受ける患者の立場から、透明性を確保し、情報は分かりやすく明確に提供すること、結果をフィードバックし、被験者の満足感につながるようにすることなどが大切であると指摘された。福富和夫元国立公衆衛生院保健統計学部長は、治験の科学性について、前臨床試験に裏付けられた見通しが先ずあるべきこと、実験計画に基づいた科学的な試験が行われるべきことなどの問題点を指摘された。最後に短時問であったが総合討論で活発な意見交換が行われた後、高石昌弘第7部副部長の閉会の辞で会を閉じた。大学や製薬企業から多くの参加者を得て、稔りの多い、充実した会であった。

 

 

 

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