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1997年7月に発足した今期の天文研連は、大型ミリ波サブミリ波干渉計(LMSA)を実現するための活動をその目標に据えた。本シンポジウムはその一環として企画された。

池内了委員長より天文研連が本シンポジウムを主催するに至った経緯と21世紀の宇宙探究におけるLMSAの位置づけが述べられた。続いて、LMSA計画推進の中核である野辺山の石黒正人氏、川辺良平氏よりLMSAの装置とサイエンス語られた。

LMSAは巨大な計画であるが、日本の電波天文学が蓄積した力を結集すれば実現は可能である。野辺山宇宙電波観測所の建設が始まった1978年と今を比べると、この20年間に研究拠点や大学院生の数は5〜10倍に増え、各研究室での独創的な研究の中で若い研究者が育っている。野辺山を核としながら全国の研究者が力を合わせて計画を推進している状況を、東京大学の長谷川哲夫氏が報告した。

続いて、21世紀初頭に研究のフロンティアがどのようになるか、その中でLMSAがどのような役割を果たすかを、各分野の専門家の方々にレビューして頂いた。谷口義明(銀河形成の暗黒時代を描き出す)、井上一(活動銀河中心核)、須藤靖(宇宙の揺らぎと構造形成)、福井康雄(星と惑星系の誕生)、井田茂(惑星科学とLMSA)の各氏は、「すばる」を始めとする大型光学赤外線望遠鏡群、次世代X線観測衛星、そしてHSTを大きく上回る次世代宇宙望遠鏡などが活躍する中にあって、LMSAはさまざまな局面でエッセンシャルな働きをするという期待が語られた。

LMSAと類似の計画はアメリカ合衆国とヨーロッパにもある。それぞれ10年以上前から構想され、当初は装置のコンセプトもずいぶん違っていたが、計画を煮詰めながら意見を交わすうちに、三者が協力して一つのより巨大な干渉計を作る可能性が見えてきた。

この間、日本はチリ北部のサイトの発見と実証、サブミリ波帯重視の思想などでリードしてきている。次に、米欧の計画でそれぞれ中心的な役割を果たしている、R. Brown氏(NRAO)とP. Shaver氏(ESO)、ヨーロッパの計画に参加を表明したイギリスからA. Wevster氏(ROE)を招き国際協力に関するセッションを持った。

最初に壇上に立った国立天文台の小平桂一台長は、日本の基礎科学の国際化の歩みを振り返りながら、今や日本も国際的な計画にイコールパートナーとして参加するときがきていると述べた。電波干渉計ではアンテナペアの数が観測能率を決める面があり、3つの計画を合わせればその能力は9倍になると言及しながら、小平氏はLMSA計画の推進にあたっては日米欧による巨大干渉計の共同建設に向けて国立天文台として努力したいと述べた。続いて石黒正人氏が共同建設・共同運用のスキームの試案を示した。これは三者協同建設の初めての具体的な提案である。これを受けて米欧英のスピーカは、それぞれの計画とその進捗を紹介するとともに、共同建設の提案を歓迎すると述べた。国際共同建設に向けて大きな一歩が踏み出されたのである。

 

 

 

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