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イタリアの2箇所の補助基地は1996年の終わりまで業務を継続したが、(航海位置の測定に不可欠な三定点が確保できないために)ネットワークは航海のための有益なサービスを提供できなかった。

しかも上述基地の管理は、U.S.C.G.から贈与された設備の老朽化によって経済負担を引き起こしていた。この管理の移行については、外交手段を介して、詳細な保障内容に基づいた説得に数カ月もかかり、期日は延期された。なぜならスペインもトルコも(カルガブルン基地にはアンテナ塔の復旧作業などの財源確保など)内部の官僚問題の解決だけに終止したためである。

現在の状況では、地中海ネットワークの有効期間内の回復のために、二つの異なる選択が残されている。

第一の構想は、ウクライナ、シンフェロポルのチャイカ基地(Sinferopol, Chayka)とイタリアの二つの基地を連結しシンクロさせることで、航海業務を保障する海上位置測定のための三地点を再確保することである。シンフェロポリ基地との二者択一として、フランス領域のパーピニャン(Perpignan)に新たな基地を建設する計画もある。これはすでに構想が練られ、財源の一部負担をE.C.(ヨーロッパ共同体)が受け入れている。この構想は、トルコとスペイン基地活動停止の継続を前提とする。

第二の構想は、E.C.がC.S.I.(独立国家共同体)にすでに認可されたTACIS(Tecnical agreement for C.S.I.)という名の技術革新プログラム用の財源援助と関連するものである。本プログラムは、その第二段階にチャイカ基地とLoran-C地中海ネットワークの連結と、無線位置測定のあらゆる衛星システム(GPS-GLONASS-GNSS)に対応する差異修正の送信を予定している。それは、デルフト大学オランダ人チームによって研究され、アメリカ合衆国とN. E. L. S.(North Europian Loran-C System)の実験を通じて簡略化された「ユーロフィックス」(Eurofix)システムを利用しながら、Loran-Cの外見上は同一音波を通じて実行される。

上述の条件のうち一方を起動するにあたって、ヨーロッパ無線航海計画(European Radionavigation Plan)のヨーロッパ委員会側からの同意も必ず結びついて、Loran-Cに関するヨーロッパの立場が公式に明らかになるであろう。その際、イタリアは基地の人員削減を目指して、現在の熱電子管での作業から、信頼できる技術と遠隔管理を用いた技術革新の導入をイタリア基地に求めるであろう。

 

将来への展望

今月(1998年11月)5日と6日の両日オスロで開かれた、最新のNELS委員会指針に関するUSCGのオブザーバーからの情報によると、Loran-Cシステムが少なくとも2008年まではアメリカ合衆国で維持されるとのことである。

E.C.-D.G. VII-のオブザーバー Jacques de Dieu氏は、2010年以降もLoran-Cの維持に対してヨーロッパの関心を表明した。

イタリア政府の立場が、国際社会の採択、より正確にはE.C.とN.E.L.S.の決定によって左右されることは明らかである。

 

 

 

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