232条と同じく科学調査に関する措置についても固有の規定があり、しかも、条約違反という特定の違法性を規定していることからすれば、やはり、263条2項にいう国や国際機関の「責任」や「賠償責任」の意味も、固有の意味をもつという推定がはたらくともいえよう(4)。
3. 232条の解釈
(1) 責任の性質
232条の規定する責任の「性質」という問題は、責任の個々の要件、責任の主体といった、個々の論点を検討するにあたっての前提をなすものである。
そこで、232条の責任の性質については、同条の責任発生要件の規定ぶりが注目される。すなわち、同条は上述のように、「違法な措置」と、「合理的に必要とされる限度をこえる」場合とを、独立に規定しており、したがって、後者の要件は、たとえば、国連海洋法条約第12部第6節の規定に違反するという意味での「違法」ではない措置ではあっても、同条の責任が発生する場合の要件を定めていると解釈することはできる。
そうであるならば、かりに、同条が、国際法上の国家の責任を規定しているとすると(5)、国際法の伝統的な国家責任法においては、国際義務の違反による国際違法行為の存在が責任発生要件であるのであって、これと比較して、232条は、それとは異なる仕方で責任の要件を規定していることになる。無論、形式論理的には、「合理的に必要な限度を越える」措置であっても、232条が、「合理的に必要な限度を越える」というひとつの違法性の内容を規定していると解すれば、232条により違法と評価される措置であるといえないこともない。ただ、国連海洋法条約第12部第6節の執行措置に関する特定の義務の違反とは異なり、232条という責任規定が、独自にそれとは別の違法な場合を規定しており、同条が、特定の実定的な義務の違反以外の原因行為に関する責任という趣旨を導入しているということはできる。
「合理的に必要とされる限度を越える」という要件の内容という問題は、海洋環境の保護に関する執行措置、とりわけ、沿岸国が外国船舶に対して執