日本財団 図書館


同条の起草過程では、1973年海底平和利用委員会の時期の、もともとのアメリカ提案においては、「合理的に必要とされる程度を越える措置」という要件が規定されている。その後、他の国によるいくつかの提案においても、「不適当な抑留(undue detention、unduly detained)」などといった具体的な要件と、other wrongful application of this Conventionなど一般的かつ包括的な要件を規定する形式の規定の提案がおこなわれている。1975年になって、法律家作業部会において、はじめて、「違法なunlawful」という要件と「違法または、必要な程度をこえる」という現行規定の雛形があらわれたのである。その後、単一草案では、一旦、unlawfulという規定は消えて、議論の焦点は、同条第一文において、国の執行措置自体の性質や方法という観点から国家の責任(liability)を論ずるというよりも、むしろ、同条第二文に規定するように、国内司法手続きによる救済に焦点がうつったようである(1)

第三に、「自国の責めに帰すべきもの(attributable)について」という要件がある。これは、1976年の修正単一草案までは、でてこない文言である(2)

第四に、「いずれの国も」「責任を負う」という要件がある。起草過程においては、一貫して、「国家が」「損害に対して責任を負う(liabile)」という規定形式がとられており、この点に、見解の相違はなかった。

第五に、232条第二文は、損害や損失に関して、自国の裁判所において訴えを提起する手段について定めることを規定している。1976年の修正統合草案において、初めて、同条の第一文における国家の責任の規定と、同条第二文における国内手続きの整備に関する規定とが、二つの文章に分けて規定されたのである(3)

(2) 国連海洋法条約における国家の責任に関する原則

国連海洋法条約には、責任に関する規定が散在するが、それらのすべてが、必ずしも、「国家」の「国際法上」の責任を規定しているかについては、慎重な検討を必要とする。以下では、国連海洋法条約232条の解釈にあたり、有意義と考えられる規定やその意義などを確認しておきたい。

1] 第16部一般規定─304条

第16部は、一般規定群からなるが、304条は、責任を規定する一般規定である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION