日本財団 図書館


5) 魚を没収して国が得る利益以上に船を没収することによってその所有者が受ける損害は非常に大きい。

6) 将来同様の違反が生じる可能性と、ナミビアの漁業資源が受ける脅威を考慮するとこの違反は重大である。

なお、船舶と装備等を没収することについて、船舶の所有者から弁明を行う申し入れはなかった。

被告人の処罰と船舶等の没収に関して以上のような理由を付して次のような判決が下された。

被告人の保釈金は20万ラント。処罰は刑罰に相当し、30万ラントの罰金、支払われない場合は4年の拘禁。また、船舶とその装備、用具は没収。ナミビア経済水域で漁獲されたすべての魚(タラ183,111トン)は没収。

(ハ) 問題点

以上のように、ナミビア法は、海洋法条約の規定に従って罰則から拘禁を削除しているが、判決では、原則的には罰金刑を科すとしながら、罰金が支払われない場合の拘禁がありうることが肯定されている。また、保証金は罰金が支払われない場合の事前徴収の意味を持つものという論旨が展開されており、海洋法条約が予定している船舶および乗組員の早期釈放についての配慮はない。

船舶、装備、違法に捕獲された魚類の没収については、同様の違反の多発、沿岸国の取締り能力の限界等の理由をあげて、容疑者本人、船舶所有者、他の違反操業者に対して、それぞれ将来同様の違反が起こることへの予防的効果があるとする。また、同様の違反に再び使用されることを阻止するための保安処分的な意味も持たせている。さらに、違反が生じることを防止する配慮を怠った船舶所有者に対する処罰の意味をもたせるような論理を展開している。

罰金の額については、ナミビア経済が排他的経済水域に依存する割合の高さも算定の指標とされている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION