日本財団 図書館


─沖縄地区「浜下りだより」から抜粋─

粟国小中学校「海洋環境教室」報告

統括推進員  高橋 進

9月14日(月)粟国小中学校で「海洋環境教室」を開催するために、泊港で巡視艇「でいご」に乗り一路粟国島へ。

粟国島での「海洋環境教室」開催は、粟国島で海洋環境保全推進活動を精力的に取り組んでおられる推進員の又吉信雄さんの働きかけによって開催される運びとなり、粟国港では又吉さんと学校の関係者が出迎えてくれていました。

粟国島は、僕が座間味にある阿嘉島臨海研究所の仕事をしている時、「座間味村産業振興ゆんたく会」という研究会の中で、粟国島の放置車両の問題を村に問い合わせしたことがあり、また、粟国島の沖合でダイビングをしたことがあるのですが、その時イルカの群れに遇ったり、海亀に遭遇してその海亀に求愛されたりと思い出深い島です。しかし、今回は島に上陸するのは初めてであり、巡視艇が島に近づくにつれそわそわとどうも落ち着かない気持ちでした。

さて、島に上陸し、民宿で一休みし、民宿と目と鼻の先にある粟国小中学校で校長先生や学校関係者への挨拶を済ませ、小中学校児童生徒74名が集まっている教室へ向かいました。

「海洋環境教室」は、一部を海上環境課の濱本専門官による統計とか様々な資料やマンガ等を使っての沖縄の海洋汚染の実態や身近にできる海の保全についての講話があり、休憩をはさんで、二部をサンゴ礁の役割やサンゴの生態、危機に瀕している沖縄本島のサンゴ礁を救うといったことをパンフレットやビデオを使って解説させてもらいました。

生徒達にシュノーケルを使って海の中を覗いてみたことがあるか聞いたところ、2名くらいしかいなかったことに驚かされました。夏休み期間中に泳ぎに海に行ったかといった問いにも、ほとんどの生徒が行っていないとのことで、島の信仰や親から海は危ないと聞かされて育った島の子供たちの現実に愕然としました。島の暮らしは半農半漁といったことで成り立ってきました。その暮らしの中で今でも祭りや祈りといったことによって伝統行事が守られてきました。海とのかかわりの中で、特に浅海(イノー)と島の暮らしは密接に繋がっています。浅海は海人だけではなく島全体の共有財産として、あるいは字の財産として管理され「海の畑」と言われてきたのです。島の家々の門には浜うりの際に持ち帰った枝サンゴが置かれ、魔除けとして持ち帰ったと島の人から聞かされました。子供たちにそのような海との関わりを伝えていくことが大人にとって何よりも大切なことではないか、そして、より多くの島の自然に触れさせる努力が必要ではないか…。

次の日には、又吉さんに島内を案内され陸上のゴミ問題や島を取り巻くサンゴ礁の白化現象が進行している様を見て、身を切られるような幸い思いをいたしました。

又吉さんのように島を愛し誇りを持って暮らしておられる人が一人でもいればこの島は大丈夫!

そんな思いを抱いて那覇に帰ってきました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION