日本財団 図書館


民事上の契約は、本来自由契約の原則を基本とするものであるが、船員は、使用者たる船舶所有者に対し従属的関係に立つため、船員法は、雇入契約の内容たる給料、労働時間等の労働時間について以下に述べるような様々な規定を設け、契約自由の原則を修正し、船舶所有者に対し従属的関係に立つ船員の保護を図っている。

 

1. 雇入契約の締結

 

(1) 船員法に違反する雇入契約

船員法は船員に係る労働条件の最低基準を定めたものであることから、同法に定める基準に達しない労働条件を定める雇入契約はその部分について無効となり、この場合、当該無効の部分については船員法の基準に達する労働条件を定めたものとみなされることとなっている(第31条)。

 

(2) 労働条件の明示

船員は雇入契約を締結するときは、その労働条件の具体的内容を十分熟知する必要があるため、船舶所有者は、雇入契約の締結の際に船員に対して次の事項を明示しなければならず、また、これらの事項について変更しようとするときも、その事項について明示しなければならないこととなっている(第32条、則第16条)。

1] 雇用の期間

2] 乗り組むべき船舶の名称、総トン数用途(漁船にあっては、従事する漁業の種類を含む。)及び就航航路又は操業海域に関する事項

3] 職務に関する事項

4] 基準労働期間、労働時間、休息時間、休日及び休暇に関する事項並びに交代乗船制等特殊の乗船制をとる場合における当該乗船制に関する事項

5] 給料その他の報酬の決定方法及び支払いに関する事項

6] 報酬が歩合によって支払われる場合には次に掲げる一定額

イ. 最低補償額(第58条第1項の額)

ロ. 失業手当の額(第45条の額)

ハ. 雇止手当の額(第46条の額)

ニ. 送還手当の額(第49条の額)

ホ. 有給休暇中の報酬額(第78条の額)

ヘ. 予備船員の解雇する場合の予告手当の額(第44条の3の額)

7] 退職、解雇、休職及び制裁に関する事項

8] 予備員制度があるときは、その概要

 

(3) 賠償予定の禁止

船舶所有者の船員に対する労働強制につながるおそれがあるため、船舶所有者は、雇入契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないこととなっている(第33条)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION