〔I〕 総則
1. 船員法の適用範囲
(1) 船員法は、船員と船舶所有者をその適用対象とするものであり、ここで船員とは、日本船舶又は日本船舶以外の命令の定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいうとされている(第1条第1項、以下条文のみを示すときは船員法の条項を示す)。
(2) 日本船舶とは、船舶法第1条の日本船舶とほぼ等しく(*1)、日本船舶以外の命令で定める船舶とは、船員法施行規則(昭和22年運輸省令第23号、以下「則」という。)第1条に、日本船舶を所有することができる者等が借り入れ、または、国内の港から外国の港まで回航を請け負った船舶、国内各港間のみを航海する船舶等(*2)と定めている。
(*1) 船舶法上の日本船舶とは、
1] 日本の官庁又は公署が所有する船舶
2] 日本人の所有する船舶
3] 日本に本店がある商事会社で、合名会社の場合は社員の全員、合資会杜の場合は無限責任社員の全員、株式会社及び有限会社の場合は取締役の全員が日本人であるものの所有する船舶
4] 日本に主たる事務所を有する法人で、その代表者の全員が日本人であるもの所有する船舶(船舶法第1条)
であり、また、推進器を有しない浚渫船は船舶とみなさない(船舶法施行規則第2条)としている。
船員法上の日本船舶とは、従来は、船舶法上の日本船舶とされていたが、そもそも船員法は船舶法とは法目的が異なっており、また、船舶の多様化の進展に伴い、船舶法上の日本船舶がすべての場合船員法上の日本船舶とされるものではなく、両法間でその取扱いが異なるものもあると解されている。具体例として、プッシャー及びパージは、船舶法上個々の船舶であるが、船員法上プッシャーとパージとの連結が緊急時に容易に切り離せないもの等については、プッシャーとパージは一の船舶とみなすとされている
(*2) 則第1条は命令の定める船舶として、
1] 船舶法第1条の法人以外の日本法人が所有する船舶
2] 日本船舶を所有することができる者及び1]に掲げる者が借り入れ、または国内の港から外国の港まで回航を請け負った船舶
3] 日本政府が乗組員の配乗を行っている船舶
4] 国内各港間のみを航海する船舶
と規定している。
(3) 船員法は、
1] 総トン数5トン未満の船舶
2] 湖、川又は港のみを航行する船舶
3] 政令の定める総トン数30トン未満の漁船
に乗り組む船員には適用されず(第1条第2項)、これらの者には労働基準法が適用されることとなっている。