第III部 モデル分析編
第1章
港湾ネットワークモデルの構築
1. 概説
前年度報告書では、世界のコンテナ輸送市場におけるフロー均衡の概念とそのフロー均衡が政府・船社・荷主のゲームの結果生まれるものであることを説明した。本章では、この考え方に基づき、ゲームの参加者である各プレイヤーの戦略と行動目的とを定式化し、国際的なコンテナ流動を解析するためのネットワーク均衡モデルを構築する。モデルの現象再現性は、現実のコンテナ流動結果との比較で検討するが、これらの数値計算および、いくつかの政府政策シナリオによる流動変化予測については次章で検討を加える。
2. モデル化の前提
本解析では、以下の点を前提としてモデル化する。
1] 政府間および船社間の競争は考えない。
現実には、港湾間競争と呼ばれる港湾管理者間のサービス競争が存在するが、各国の政策方針や港湾整備制度による制約もあり、市場での自由競争のようには競争できないのが実状である。したがって、本モデルでは、政府間の競争は取り扱わない。また、ゾーン間OD貨物量の価格非弾力性を仮定することから、海上運賃は与件として考える。したがって、市場における船社の競争は考慮しない。
2] 政府の施設整備・港湾運営戦略はシナリオとして与件とする。
3] 外航船社の各航路における船便はすべて定期便とし、1港寄港便および直航便のみを考える。
現実には、1港寄港便は就航していないが、複雑な寄港便を考慮しなくても、過去の成果から、貨物の流動は十分な精度で再現できると考えられるからである。寄港便・直行便は、往路・復路とも同じ港湾間を航行するものとする。