ターミナル間でのコンテナ横持ちについての新しい手続きは、1997年12月8日にパシール・パンジャン・ターミナルの供用が開始されたときに始まった。これは、パシール・パンジャン・ターミナルが、シンガポール港運営(株)のタンジョン・パガール・ターミナル、ケッペル・ターミナル、ブラニ・ターミナルと連携したコンテナ・ターミナルとして機能し始めたためである。シンガポール港運営(株)は、ターミナル間でのコンテナ横持ちをできる限りスムーズに行うべく、関税・物品税局に要請を出した。これにより、コンテナ・ターミナル間でのトランシップメントの手続きが簡略化された。
これより先に、関税・物品税局はコンテナ通関について申告書の書類提出を廃止した。税関のチェックポイントでは、コンピューターの端末にコンテナの番号を入力すれば、関税・物品税局のコンピューター・システムにつながり、税関申告書の詳細な内容について確認することができる。また、書類の提出を廃止することで、申告手続きに要する時間を大幅に節約できる。このような手続きの簡素化は、シンガポールがアジア域内のハブとして効率的に機能するために導入された手段である。
関税・物品税局の役割の変化は、1980年代中頃、シンガポールが不況に苦しんでいたころにすでに始まっていた。シンガポール国内にはりめぐらされたトレードネット(TradeNet)という電子データ交換システムに連結されることにより、関税・物品税局の業務内容と事務処理のスピードが一変した。電子データ交換システムは、もともとは海運ビジネスと港湾庁のあいだで情報を交換するために作られたシステムだが、さらに物品・サービス税という新しい税制度が導入されることにより手続きの簡素化にも拍車がかかっている。
(4) フレイト・フォワーダーの業務
コンテナリゼーションが始まった当初、コンテナのなかに貨物を積めて安全に、簡単に輸送できるシステムは船社にとって画期的であった。包装や輸送、書類の作成や通関といった煩雑な手続きが一気に簡略化されることにより、船社と荷主の間をつなぐフレイト・フォワーダーの役割は不要になるかと思われた。
しかし、実際にはコンテナ1箱に満たない貨物(LCLカーゴ)の集荷と混載は、船社が扱うコンテナ1箱を満たす貨物(FCLカーゴ)のオペレーションとまったく異なる。前者を専門に手がけてきたのが、船社と荷主の間にたって煩雑な手続きを代行するフォワーダーであり、小口貨物の荷主(依頼主)の代理人として輸送業務に携わる。フォワーダーのなかでも小口貨物の集荷・混載システムを整え、大量のFCLカーゴを出すことのできるものは、船社との交渉で有利な条件を手にすることができる。
フォワーダーは、通常は集荷地から目的地までのすべての輸送について、通し船荷証券のもとに輸送責任を負う。