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(5) ビジネスとしての港湾経営

シンガポール港湾庁の運営方針に関しては、1957年に発表されたシンガポール港調査委員会の報告書で、いくつかの提言が述べられている。その中には、すでに1997年の港湾庁の民営化を予見するような先進的な提言が含まれていたことは注目に値する。たとえば、調査委員会の報告書では、港湾サービスは営利をあげるビジネスとして運営されるべきものであることが以下のように指摘されている。

「シンガポール港は、その日常的な活動と長期的な改善、開発、資金調達についても政府の管理を離れるべきであると当委員会は考える。加えて、その組織と規制は、適切に秩序付けられ完全に独立した公共サービスとして円滑に、かつ効率的に運営されるべきと考える。そのような状況においては、政権によっておもな監督機関が政治的道具として利用されること、そして政府によってその機能と長期的な政策が妨害されることはなくなるであろう」1)

1) Ho(1996)P.32より引用。

 

(6) 独立採算の原則

また、港湾管理者が港湾サービスに対する料金を徴収し、独立採算で運営することが港湾政策を遂行するうえで重要であることが港湾調査委員会の報告書のなかに述べられている。港湾庁は、1975年から独立採算の原則を守っている。設備投資については、累積した余剰金のなかから調達している。

 

(7) 長期的な港湾計画の重要性

港湾施設やサービスへの需要が予測され、適切な設備やサービスがタイミングよく供給されるためには、長期的な視野の港湾計画が必要である。これは経済成長を担保するための国家的な港湾整備計画の重要な要件となる。港湾調査委員会の報告書には、長期的な港湾計画の重要性について以下のように説明されている。

「当委員会は、新しく設立される港湾庁の最初の仕事の一つは、港湾整備の長期的政策を策定し、かつ港湾政策に優先順位を付けるという目的のもとにシンガポール港全体に関するきめこまかな配慮をすることと考える」2)

2) Ho(1996)P.33より引用。

以上のような運営方針のもと、港湾庁は長期的な視点から政府の経済計画と連携した港湾整備政策を策定し遂行してきた。

 

 

 

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