4. 香港港をめぐる環境変化と中国国内港湾間競争の激化
PDBさらにはPMBの設立およびそれによる「官民融合型」政策の展開に見られるような香港特別行政区政府による港湾・海運産業への実質上の関与の強化がはかられる背景には、香港をとりまく政治・経済的環境の変化がある。それは香港経済の政治・経済面での「中国化」と中国国内港湾間競争への香港港の参入である。
(1) 香港経済の「大陸化」
現在、香港港をめぐる環境は急激に変化している。環境変化をもたらしている最も大きな要因は香港の中国復帰である。一言するならば、香港経済は復帰が本格的に決定された90年代以降、急速に「中国化」の道を進んでいる。以下では貿易、投資両面で香港経済と中国経済の関係の緊密化を確認しておこう。
1) 香港の対中貿易依存度の上昇
図表II-2-5およびII-2-6は香港の対中貿易と地場輸出・再輸出の動向を見たものである。一見して分かるように、中国向け輸出および中国からの輸入が額・シェアともに増加・上昇している。また地場輸出と再輸出を見てみると、地場輸出は年々、その金額を減少させているのに対して、再輸出は急激に増加しており、97年には香港の輸出の85.5%を占めるまでに至っている。
香港の再輸出品の原産地と仕向地を見てみると(図表II-2-7)、原産地は圧倒的に中国が多く、再輸出額の50%以上を中国が占めている。図表II-2-6で見た中国からの輸入の多さは、中国を原産地国とする再輸出品の多さによるものである。香港は香港の地場産業の輸出というよりも中国製品の輸出窓口としての機能を強めつつある。