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7) 議決・執行機関としての委員会

港務局は、議決・執行を行う委員会を置く。港湾法第十五条に「委員会は、港務局の施策を決定し、港務局の事務の運営を指導統制する」とされている。港湾法第十六条において、この委員会は7人以内と定められているが、港務局を組織する地方公共団体の数が3を超える場合には11人の委員で組織する。

新居浜港務局の場合は、定款第10条のとおり7名の委員が委員会を構成する。委員任命については第11条に定められている。現在、委員を構成するのは、新居浜市助役、市議会の議員(多数派)、愛媛県庁職員、旧管理者である住友金属鉱山(株)が推薦する2名、荷主代表2名(住友化学工業(株)1名、住友共同電力(株)1名)となっている。つまり、新居浜港の旧管理者側が委員の過半数を占めている。

委員長は委員の互選によって決められるが、港務局設立当初からのパターンとして、新居浜市助役が委員長をつとめている。委員会は港務局の施策を決定するが、決め方は全委員の過半数をもって決められる。

 

(4) 財政的な自律性の欠如

港湾法は、港湾管理を国から地方公共団体へ移したという意味では、今日的な地方分権の発想を先取りする画期的な措置であったと言えよう。地域の実状をもっともよく把握している地方公共団体に、港湾とそれを支える港湾サービスの提供を委ねることにより、港湾の利用者と地域住民の便益を増すという考え方である。

しかし現状をみる限り、港湾法に規定されている港務局の自律性は、必ずしも満たされていない。とりわけ財政上の自律性について、港務局は重要港湾の港湾管理者として、他の地方公共団体と対等な位置づけでありながら、自ら資金調達をすることができないという大きな問題点を抱えている。

港湾法第30条によれば港務局は起債することができるにもかかわらず、新居浜港務局はその設立以来、起債したことがない。その理由は、港務局は地方公共団体が組織する公法上の法人だが、それ自体は地方公共団体ではないから起債を許可しない、という自治省の判断による。現在、地方財政制度のもとでは、地方公共団体は毎年の起債枠に従って地方債を起債し、行政サービスを供給するのに必要な資金を調達している。地方自治体が組織する公法上の法人に起債を許可すれば、地方財政計画のフレームワークを維持できなくなるという政策当局の懸念があると推測される。

現在、新居浜港務局は、新居浜市が起債枠にしたがって地方債で調達した資金を、負担金の名目で受け入れている。ちなみに、平成10年度の港務局の予算は約9億5千万円、このうち新居浜市からの負担金が4億9千6百万円となっている。

 

 

 

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