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集貨体制について、港湾管理者が抱えている深刻な悩みはポートセールスを担当する人材が確保できないことである。現在、土木部港湾振興課のポートセールス担当者はわずか2名にすぎない。しかも2〜3年のローテーションで人事異動するため、ポートセールス担当者が頻繁に変わり、セールス先の船社や荷主との人間関係が保てないという問題を抱えている。この点については、荷主や船社からも不満が寄せられている。今後の集貨活動については、商工労働部との政策的連携が必要であると認識してはいるものの、具体的な取り組みはまだ行われていない。

 

3) 宮城県におけるFAZの取り組み

宮城県は、仙台港区および仙台空港周辺地域(仙台市宮城区、若林区、塩釜市、多賀城市、名取市、岩沼市)を輸入促進地域(FAZ:Foreign Access Zone)として指定し、平成7年3月に国の承認を受けた。輸入促進する貨物は、水産物、食品・食材、ハイテク製品、雑貨(輸入住宅)である。港湾と空港のFAZ事業主体として、(株)仙台港貿易促進センターと仙台エアカーゴターミナル(株)が設立された。現在、高砂コンテナターミナルを業務委託のもとに管理しているのは、(株)仙台港貿易促進センターである。

(株)仙台港貿易促進センターは資本金26億7千2百万円、おもな出資者は宮城県(資本金の29.8%)、仙台市(同29.8%)、産業基盤整備基金(同16.5%)であり、その他地元の民間企業45社が出資している。仙台港の関係施設としては、平成11年に仙台港国際ビジネスサポートセンターが、平成12年に仙台港高砂輸入貨物ターミナルが供用開始の予定である。これらの施設についても県と市が折半で出資し、国際貿易の促進について連携をつくりつつある。また、輸入コンテナ貨物を処理するため、保管、荷さばき、流通加工、展示・販売機能や情報処理機能をそなえた総合輸入ターミナルを整備中である。

 

(4) 港湾管理者として自治体が抱える問題

1) コンテナターミナル整備と情報管理の重要性

地方港の整備においては、新産業都市の指定を受けた自治体を中心として、工業港のイメージでコンテナターミナル整備を進めるところがしばしばみられる。これら自治体では、バルクカーゴを出荷する重厚長大産業を港湾の背後地に誘致することが、港湾政策の基本と考えられているのかもしれない。しかし、工業港で扱うバルクカーゴと商業港で扱うコンテナカーゴはまったく異なる輸送システムにより運ばれている。コンテナカーゴの集貨体制について、行政サービスとしてできることは地元の貨物に関する情報収集にとどまり、管理者として自治体が対応できることはきわめて限られている。

コンテナカーゴの集貨体制については、第II部海外調査編の香港やシンガポールのケースにみるとおり、地理的な比較優位に加え、高度の集貨体制とコンピューター・ネットワークによる情報管理が不可欠である。

 

 

 

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