博多港の急激な成長を支えたものは輸出においては大荷主の大量貨物である。博多港の輸出貨物のほぼ8割が、九州島内に立地するブリヂストン・タイヤ、本田技研熊本製作所、九州松下電器の貨物によって占められている。博多港はこれら3社の大量貨物を背景にコンテナ航路誘致に成功し、さらに福岡市という九州島内最大の消費都市と鳥栖市という同島内の物流拠点を直接の後背地に持つというメリットを活かして消費貨物の一大輸入基地となっている。このように博多港の成長は典型的な大荷主主導型の航路誘致の成功例である。
以上のように、九州および山口においては博多・北九州両港が地元貨物の集荷を推し進めており、このことが同地方における神戸港依存度の低下の原因となっている。
(2) 関西における港湾間競争の構図
以上、西日本における競合港湾の台頭について見てきた。しかし、他の日本の地域と同様、近畿地方においても地域圏内港湾間競争が見られる。ここでは五大港のうち、その2つを占める神戸港と大阪港の間の競争と、阪神両港(=大阪・神戸両港)の間の競争を見てみよう。
1) 阪神間競争
1] 阪神両港のコンテナ貨物取扱状況
(a) 神戸港のコンテナ貨物取扱量の減少
神戸港のコンテナ貨物取扱量の推移を見てみると(図表I-4-20)、輸出貨物については、大震災後、震災以前の7割程度に急減しているが、90年代初頭にすでに取扱貨物量は横ばい状態になっている。輸入貨物に関しては、バブル崩壊後の90年代初頭に取扱貨物量の伸び悩みを見せた後、90年代半ばから再び増勢に転じたところで、95年1月の大震災に見舞われ、取扱貨物量が震災以前の、やはり7割程度に減少している。