4) 各経済主体のニーズの対応関係
以上の各利用者のニーズをそれぞれ対応させてみるならば、次のようになる。
a] 大荷主とインランド・デポを持つ国内貨物取扱業者はそのニーズがほぼ一致している。当該利用者達は港頭地区における港湾物流サービスを内陸部で肩代わりしているため、港頭地区の港湾物流サービスの集積は必要としていない。したがって当該利用者達のニーズは港頭地区における効率的な集荷体制の整備を必要としている外国貨物取扱業者のニーズとは対立するものである。
b] 中小荷主のニーズと外国貨物取扱業者のニーズは一致しやすい。特に中小荷主が彼らの港湾物流サービスを外国貨物取扱業者に依存した場合は、両者のニーズはほぼ一致する。しかし中小荷主がインランド・デポを利用した場合は、中小荷主はほぼ大荷主と同じニーズを持つことになる。
c] 船社のニーズは、港頭地区におけるスピード・アップとコスト・ダウンという点において大荷主やインランド・デポを持つ国内貨物取扱業者のニーズと一致する。ただし、安定的な荷役という点では外国貨物取扱業者と同じ立場にある。とりわけ船社にとって良質な外国貨物取扱業者の存在は不可欠であるため、このことは、潜在的であるが重要なポイントである。
5) ニーズの多様性がもたらす諸問題
以上のことから次のことが言える。
1] 大荷主主導型物流による港頭地区の空洞化
大荷主の大量貨物を扱う物流サービスが港頭地区に限定される必要はないため、大荷主が求める港湾サービスのあり方は産業としての港湾物流サービスの港頭地区における集積、とりわけ個別荷主対応的な業務(混載・仕分け、バンニング・デバンニング、梱包等)の集積をもたらすものとは言えない。大荷主に利用されるコンテナ港湾は画一化・単純化された輸送・荷役作業を行う場としての役割しかもたなくなる可能性が高い。
2] インランド・デポの整備による港頭地区の空洞化
中小荷主の貨物の集荷は外国貨物取扱業者が担当するケースが多いため、港頭地区における港湾物流サービスの集積をもたらす要因となりえる。