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(d) 大荷主主導型物流の1事例─冷凍食品メーカーのケース

具体的な事例としてある大手冷凍食品メーカーのコンテナ物流体制を見てみよう。

この大手冷凍食品メーカーはもともと港頭地区に冷蔵倉庫を持っており、そこで水揚げされた海産物等の加工を行ってきた。しかし80年代以降、中国をはじめとする他の東アジア諸国に生産・加工拠点を設立し、生鮮食品類だけでなく加工食品類に関しても海外生産を行い、それらの食料品を日本国内に輸入するようになっている。この変化に対応して、港頭地区倉庫ではなく、国内内陸部の物流の拠点地域に新たに冷蔵倉庫を設置し、そこでコンテナ・デバンニング、通関、検品、各種流通加工を行い、これらの作業を行った後、最終消費者(主に小売業者)に各種冷凍食品を配送している(図表I-4-2)。

 

図表I-4-2 大手冷凍食品メーカーの輸入コンテナ貨物の取扱経路

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このケースは港湾物流サービスを大荷主が自社内部化するとともに、当該サービスの発生地点を内陸部に移転させたものである。また最終消費者から見るならば、この冷凍食品メーカーは「外国貨物取扱業者」の位置にあると言える。

2] 中小荷主

一方、中小荷主は、大荷主と違って一般的に企業体力が弱い。そのため物流業務を自社に内部化することは困難である。また物流業務をアウト・ソーシングする場合でも主体的・主導的に行うケースは比較的まれである。このように中小荷主は物流業務に関してはフォワーダーにそのほとんどを任せる場合が多いため、フォワーダーによって選定された物流ルートが優先されることが大半である。中小荷主の、このようなフォワーダー依存は次の2つのパターンを生み出す。

(a) 港頭地区の港湾物流サービスへの依存

港頭地区に立地している港湾物流業者に港湾物流サービス(バンニング・デバンニング、混載・仕分け、通関等)を委託している中小荷主は、港湾物流サービスが充実し当該港湾物流業者が立地しているコンテナ港湾に利用港湾を限定されることになる。

(b) インランド・デポの物流サービスへの依存

インランド・デポで(準)港湾物流サービスを提供している内陸物流業者に当該サービスを委託している中小荷主は、港頭地区における港湾物流サービスの充実を必ずしも必要としない。従来、港頭地区で提供されてきた港湾物流サービスが内陸部でも供給されるようになっているからである。

 

 

 

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