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共通しているのは、原材料供給者から最終顧客までのサプライチェーンを対象とし、その過程におけるすべての流れを統合的に管理することである。最近では、環境問題に対応して、最終消費者からの廃棄・回収過程も含める場合が増えている。

議論が分かれるのは、どのような機能を統合的に管理するかである。もともとSCMの焦点はロジスティクスに置かれていたが、その他の機能も含めて定義する場合が増えている。しかし、すべての機能を統合しようとすれば戦略的提携と変わらなくなってしまい、SCMを区別する意味が失われる。

阿保(1998)では、米国の研究からSCM概念として5つの学派があると指摘している。

・ チェーン構成派(戦略的提携に基づき、企業間のチェーン化を図る)

・ ロジスティクスによる連結派(ロジスティクス部門を中心に連結)

・ 情報派(情報の交流を中心に連結)

・ 統合的SCM派(機能別ではなく全体最適の観点からビジネスプロセスを再編成する)

・ 未来派(最終需要者の主導によりシームレスなSCMを構成する)

これらの学派は、ほぼ発展の順に並んでおり、SCMの発展に伴ってその概念も変化していることが伺われる。SCMの概念はこのようにいまだ流動的であり、最初に述べた共通項の範囲を超えて議論することは難しい。以下では、共通項の範囲にとどめ、港湾物流に関連が深いロジスティクス効率化を主眼としたSCMを中心に扱うこととする。

 

(4) サプライチェーン・マネジメント(SCM)の効果

SCMの効果は、ゼロックス、IBM、クライスラー、ナビスコ、プロクターアンドギャンブル等の有力企業の成功事例によって、注目を浴びている。しかし、SCMの定量的な費用削減効果を測定することは、管理会計上、物流費が様々な費用項目に紛れていることからみても困難である。費用削減効果を測定するには、特殊原価計算など調査を行わなければならない。またこうした調査結果は企業秘密に属し、公表される場合はまれである。

このような制約があるため、定量的な効果の測定結果はあまり詳細には紹介されていないが、紹介された範囲ではかなり高い効果が示されている。例えばQuinn(1997)は、コンサルティング会社Pittiglio Rabin Todd & McGrathの調査では、SCMの導入に成功した企業は中位の競争業者と比べSCM関連費用が45%低いことを紹介している。また、マサチューセッツ工科大学の統合SCMプログラムでは、SCM導入によって在庫量の50%減、時間指定配達率の40%増、サイクルタイムの27%減、在庫回転率の倍増、在庫切れ率1/9低減、売上高17%増となったと紹介している。

SCM関連費用の低減は、不必要な保管、輸送、取引プロセスの削除、情報システムによる取引費用の削減等によってもたらされる。しかし、SCMの効果は、費用削減ばかりでなく、顧客満足の増大に現れる。むしろ顧客満足の最大化がSCMの最大の目的と指摘するものも多い。

 

 

 

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