日本財団 図書館


具体的施策として掲げられているのは技術的な側面であるが、括弧内に示されるように「商慣行の見直し、電子商取引の推進や取引単位の標準化などによる企業間連携」がSCM推進の重要な要素となる。

商慣行の見直し等については、「商慣行調査の実施、物流コスト算定活用マニュアル及び物流合理化ガイドラインの普及等により、商品価格と輸送費、包装費等の分離表示、出荷の平準化・大ロット化、荷主による物流サービスの調達活動の透明化・効率化を促す」ことがあげられている。実際には技術的な課題に劣らず商慣行の見直しが重要であるが、民間事業者の問題であり行政として直接関与することは難しいことから、このような表現になっているものと考えられる。

 

(3) サプライチェーン・マネジメント(SCM)の概念

日本の物流改革を進めるうえで、SCMは重要な課題としてあげられている。しかしながら、論者によって様々にSCMの概念は用いられており、混乱を引き起こしている場合もある。ここでは、簡単にSCMの概念を整理しておくことにする。

総合物流施策大綱では、前述のように「商慣行の見直し、電子商取引の推進や取引単位の標準化などによる企業間連携を通じて消費から生産までの情報と物の流れを効率化することで、消費者ニーズを反映した商品をスピーディーに適正な価格で提供する仕組み」と具体的にかみくだいてわかりやすく説明している。

SCMの概念は多様化しつつあるが、共通項としてはこの説明のように、原材料供給業者、製造業者、卸売業者、小売業者等、段階の異なる事業者によって構成されるサプライチェーンのロジスティクスを企業間の連携で効率化することを指している。ロジスティクス・マネジメントが企業単位での原材料の供給から生産、配送、販売に至る統合であるのに対し、SCMでは企業の枠を超えて必要な情報を共有することにより企業単位では不可能な効率化を可能にすることが強調される。

しかし、SCMの概念はロジスティクスの範囲に留まらない場合も増えている。ロジスティクスの効率化のためには、小売業者の実需情報を川上に効率的に伝達することが必要となり情報の役割が重要になる。SCMを対象とする情報システムの導入が進められていることもあり、情報の共有に力点を置くSCMの考え方も広まるようになった。

また異なる流通段階にある企業が協力するためには、共通した戦略がなければならない。この点からは、共通戦略に基づく戦略的提携を重視することもできる。さらには、情報システムを通じてバーチャルに単一組織のように連携することも考えられる。

このようにSCM概念が多様化してきたのは、実態面でSCMが進展してきたためと考えられる。米国では、1982年にSCMを論じた最初の論文が発表された後、SCMについて多くの議論が行われてきた。米国ロジスティクス協会(CLM)は物流やロジスティクスの定義を示しているが、SCMについてはまだそこまで至らず、論者によって様々な定義が行われている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION