一方、生殖巣に関しては、主として生殖細管内の卵母細胞の細胞質を中心に特徴的な組織像が観察され、また、それらの出現頻度には4地点の個体間で明確な差が認められた。
すなわち、その特徴とは、平成9年度にも報告した、生殖細管内に非常に多数のエオシン好染の油滴状物を有する卵母細胞および細胞様構造、あるいはそれらの崩壊過程にあると推定される構造体が観察されることであった。しかし、出現の時期については若干異なり、このような組織像が観察される個体は、特に7、8月に多かった。また、調査地点の比較では、東名地先の個体が最も多かった。野蒜沖、竹ノ浦、舞根の個体では大きな違いはみられなかった。
こうした組織像の出現が、いかなる生理的現象に起因するのかは明確ではない。しかし、本研究に使用したフランスガキが本来、比較的寒冷な海域に生息する種であり、これらのエオシン好染油滴状物の組織像が4調査地点の中では最も水温の高かった東名地先の試料に数多くみられたことからみて、これらの組織像は、個体の生命維持にとっては必ずしも重大な問題ではないが、何らかの好ましくない生理現象を反映している可能性があると考えられた。