(b) 養殖フランスガキの成長、性成熟の一般性状の定期的な検討
【材料および方法】
材料のフランスガキは、系統保存している母貝から1994年6月に人工採苗し、女川湾竹ノ浦の筏で垂下養殖している4年貝である。1998年5月6日に舞根湾に、また、6月4日に松島湾東名地先と石巻湾野蒜沖に、これらの貝のうちの約100個体ずつを移植して、各調査海域における垂下試験飼育を開始した。
試験個体の採集は竹ノ浦と舞根では、6月16日に、そして東名地先と野蒜沖では6月24日に開始し、その後も少なくとも毎月1回の採集を行うことを原則とした。個体測定の項目は、殻高・殻長・殻幅・軟体部重量とした。個体測定終了後、軟体部中央部の生殖巣を含む縦断面で組織片を切り出し、ブアン液で固定した後、常法に従ってパラフィン切片を作製した。これにヘマトキシリン・エオシンの二重染色を施し、生殖巣と周辺の各組織の組織学的な観察を光学顕微鏡下で行った。
【結果および考察】
1) 調査期間における成長
個体測定の結果、個体ごとの変動が大きく必ずしも明確ではないが、傾向として特徴的であったのは、軟体部重量が野蒜沖、竹ノ浦そして舞根の3箇所では8月以降順調に増加したのに対し、東名地先の個体では8、9月に大きく減少し、その後わずかに増加する傾向を示した点であった。この理由として、8月以降にみられた軟体部重量の変動が水温の上昇と溶存酸素量の著しい低下とによく一致することから、東名地先の個体が示した減少は高水温および酸素欠乏の影響を受けた可能性が考えられる。前述の通り、この時期の東名地先では一部個体の斃死が認められた。
2) 性成熟と放卵・放精の進行についての組織学的観察
フランスガキは、雌雄同体であるが、精子形成と卵形成が同期的に進行するのではなく、一般に、精子形成が卵形成に先だって進行する(図(b)-1)。