カムケースは高位配置のハイカムシャフトとして、燃料噴射高圧管並びに吸排気弁駆動油圧高圧管の長さの短縮化を図っています。カムケースはカム軸を上部側から組み付け、ローラガイドライナと鋳鉄一体のベースプレートをボルト締結する方式で、力学的にも合理的な構造になっています。クランクケース窓・カムケース窓は大きくし、内部の保守点検作業を容易にしています。
主軸受は高い燃焼圧力により高荷重を受けますが、開放点検が容易な構造とするため、台板方式としました。台板と架構は高張力スタッドによりクランク室窓から締付ける構造にしています。
4.2 クランク軸と主軸受
クランク軸は鍛鋼製で、十分な強度と剛性をもたせています。また、ねじり振動を考慮して軸径を太くしています。主軸受は薄肉精密軸受で、軸受合金は強化ホワイトメタルを採用しています。
4.3 ピストンと連接棒
ピストンは2分割構造です。高い燃焼圧力と熱負荷を受けるクラウンは特殊鋼の鍛造製で、触火背面の冷却は潤滑油によるカクテルシェーカ冷却を行っています。2本のコンプレッションリング溝は上下面に硬質クロムメッキを施して耐久性の向上を図っています。スカート部は鋳鉄製で、十分な強度と剛性をもたせ、摺動面は馴染性・耐スカッフ性の特殊表面処理を行っています。
ピストンリングはコンプレッションが3本、オイルリングが2本で構成されています。トップリングはガスシール効果の良いGT(ガスタイト)リングを採用し、ブローバイを防いでいます。オイルリングは追従性の良いコイルエキスパンダ付を採用し、潤滑油の揚りを抑えています。
連接棒は鍛鋼製で、小端のピストンピン軸受部は、高い燃焼圧力に耐えるようにピストンボス部とともに適正面圧になるよう考慮しています。軸受メタルは鉛青銅合金にオーバレイを施しています。大端部は3分割で、2分割のクランクピン軸受ハウジングと連接棒をボルト締めする構造になっています。クランクピン軸受ハウジングは上下ともに鋳鋼製で、高い燃焼圧力に耐えるよう十分な剛性をもたせています。軸受メタルは耐荷重性の優れたアルミ合金にオーバレイを施しています。上下軸受ハウジングは通しの高張力ボルトで締結され、薄肉メタルをクラッシュする構造になっています。
4.4 シリンダライナ
シリンダライナは遠心鋳造法による鋳鉄製で、肉厚を増すことなく強度アップを図っています。平均有効圧力の上昇にともなって熱負荷は過酷さを増しています。ボアクーリング方式は応力集中の問題で、2〜2.5倍肉厚を必要とすることから、これを採用することなくシリンダライナの肉厚を適正に抑え、冷却水の流れを工夫することで熱伝達の改善を図り、熱負荷を従来レベルに抑えることができました。シリンダライナの内面は耐摩耗性の優れた硬質クロムメッキを施しています。また、C重油使用の場合には、最適タイミングに最適量を注油するタイミング注油装置が装備されます。
4.5 シリンダカバーと吸・排気弁
シリンダカバーは球状黒鉛鋳鉄製で、燃焼圧力の上昇にともなう機械負荷及び平均有効圧力の上昇にともなう熱負荷に対し、十分な強度と剛性をもたせるため、上部肉厚を厚く、下部触火面肉厚を薄くし、さらに中棚構造にしています。
吸・排気弁は各1個の2弁式で、いずれも弁箱方式にして、駆動は油圧管制方式にしています。