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マキタL30M・L31M機関 ─低速4サイクル機関─  株式会社 マキタ

 

1. はじめに

L30M・L31M機関は、最近特に取り上げられている地球環境保全や船内環境の改善に貢献するため、“地球環境にやさしい・人にやさしいエンジン”を開発コンセプトに、省燃費・低NOx生成・低騒音・低振動を実現した新しいタイプの舶用主機関であります。

本機関は燃焼とNOx生成低減化技術を開発の重要テーマとして位置づけ、良好な燃焼を達成するとともにNOx生成低減化の目標を達成しました。

新しい企画として、吸・排気弁の弁腕衝棒方式を廃止し、油圧管制方式の採用により、機械的衝撃音の発生する部分を機関から一掃し、併せ動弁注油などの飛散がなく、クリーンな機関を実現しました。また、カム軸の歯車駆動方式を廃止し、チェーン駆動方式の採用により、機械的振動・騒音を一掃し、併せチェーンの弾性伸縮によるダンピング効果により歯車駆動のようなピッチングの恐れがなく、高い信頼性を実現しました。更に操作性・保守点検の容易性・メンテナンスインターバルの延長など、機関取扱者の立場に立ったデザインとなっており“地球環境にやさしい・人にやさしいエンジン”としてこれからの内航船業界に大きく貢献できるものと考えています。

 

2. 開発テーマと経過

 

2.1 高出力・低燃費

(1) 正味平均有効圧力と平均ピストン速度を上げ、出力率13.873MPa・m/s(141.50kgf/cm2・m/s)の上昇を図っています。

(2) 燃焼最高圧力を上げ、熱効率の向上を図り、省燃費化を図っています。

(3) ストローク/ボア比を2.0とし、ロングストローク低回転機関で推進効率の向上を図っています。

 

2.2 軽量・コンパクト

(1) クランクケース・シリンダブロック・給気管・カムケースを一体構造の架構とし、貫通ボルトを廃止し、主要管類を内蔵させ、コンパクト化を図っています。

(2) 主要構造部は、高い燃焼圧力にも耐えられるよう、有限要素法(FEM)による応力解析を行い、最適な形状を選定し、十分な強度と剛性を持たせながら、軽量コンパクト化を図っています。

 

2.3 船内環境改善に貢献

(1) 動弁機構を油圧管制方式とし、低騒音化を図るとともに、油の飛散・オイルミストの雰囲気を一掃しました。

(2) カム軸駆動を機械音が発生する歯車駆動からチェーン駆動方式とし、チェーンの弾性伸縮によるダンピング効果により、低騒音化を図りました。

 

2.4 排ガス対策と環境保全に貢献

(1) 燃料噴射系の適正化を図るとともに、燃焼室形状・スワール流・スキッシュ流の適正化を図り、全負荷域において良好な燃焼を達成しました。

(2) NOx低減対策として、等圧燃焼と圧縮比上昇の組合せにより、燃費の増加を0%に抑制し、NOx生成濃度を25%低減することに成功しました。これは、IMO規制基準を十分クリヤーできるものです。

(3) 将来の大幅なNOx生成低減技術の開発を目指して、理想的な等圧燃焼を達成するべく燃料噴射系の研究開発を行いました。燃料噴射系は特許権申請中です。

 

 

 

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