これらのうち、オイルフェンス、油吸着材、油回収装置等の物理的油防除資機材について、米国及びカナダの技術基準及び型式承認制度の現状を調査したところ、両国とも、こういった制度は採られていないとのことであった。我々の質問に対する各機関の回答は、次のとおりである。
1] 米国環境保護庁(環境対応チーム・センター)
油吸着材については、環境に残らないものであれば何を使ってもよいというのが基本的な考えである。製品がそういったものであれば意見も言わないし、関与もしないというのが環境保護庁の姿勢である。ただし、油を沈めるものについては使用してはならず、また、回収の必要のあるものは回収しなければならない。使用した後に、水に浮いているものであれば何でもよく、回収の際の取扱いの善し悪しによって製品が選別されるであろう。
2] 米国沿岸警備隊(NSFCC)
油回収機に要求される条件というものはない。ワールド・カタログに記載された値の20パーセントを採用し、性能によって各油回収機を格付けしている。米国には十分な資機材があるので、個々の資機材に要求される基準といったものは必要とされていない。緊急時計画(Contingency Plan)に組み込む際にも、各企業にできることを提出させ、足りないところを補うようにして計画が作成されている。
2) 性能試験法
我が国では、オイルフェンス及び油吸着材の性能試験基準が、「排出油防除資材の性能試験基準」(昭和59年2月1日舶査第52号。以下「舶査第52号」という。)に定められており、オイルフェンスについては、浮遊試験、強度試験、気室の漏洩試験等の方法が、また、油吸着材については、シート状のもの及びロープ状のものに係る吸着量や吸水量等についての試験の方法が規定されている。さらに、油回収装置については、舶査第441号により、油回収能力を把握するための認定試験法が定められているところである。
近年、油吸着材には、シート状のもの又はロープ状のものの外に、様々な種類のものが開発されており、米国材料試験協会(ASTM: American Society for Testing And Materials)では、形状によってこれを細かく分類し、分類毎に種々の性能試験法を定めている。また、カナダ連邦環境省(Emergencies Science Division, ETC, Environment Canada)とカナダー般標準評議会(Canadian General Standard Board)では、両者が合同で性能試験法を定めており、これらの方法を始めとする、油吸着材や油回収装置の性能試験法について調査したところ、次のとおりであった。
1] 米国
イ 油・有害物質環境影響大型テスト・タンク(Ohmsett)
ブーム(我が国では、「オイルフェンス」といわれているが、海外ではOil Boomといわれている。)とスキマーについては、ASTMの方法に従って試験を行っているが、油吸着材については、試験の都度、独自の試験法を考案している。