4.2.3 移動体衛星通信の現状と将来
最初の通信衛星は、1965年にインテルサットのアーリーバードによりサービスが開始されて以来30数年が経過した。その間に国際、国内および地域間の通信サービスを行う多くのシステムが運用され、ほぼ全世界的に普及している。衛星の利用は固定通信のほか、放送、移動体衛星通信、多目的衛星通信等にも拡がり今日に至っている。
近年の社会経済活動のグローバル化・ボーダレス化の急速な進展に伴い、インターネットや衛星通信・放送サービスをはじめとした国境を越えた情報通信サービスの普及や通信事業者の国際的な変革等、情報通信においてもグローバル化・ボーダレス化が急速に進展している。
移動通信システムにおいても例外ではない、情報通信端末の世界的ポータビリティの実現、大量生産による価格低減、さらには、ソフトウェアやコンテンツの世界的な相互流通・利用の実現等を図るべく、情報通信技術のグローバル化が積極的に推進されている。
さらに、衛星通信システムにおいても、移動体通信が大きな発展期を迎えようとしており、なかでも低軌道の周回衛星システムは将来大きな発展を秘めているものとして注目されている。
2000年ごろに始まる第1世代のイリジウム、ICO、グローバルスターなどの周回衛星通信システムが音声4.8kbps、データ1.2〜2.4kbpsでサービスを行う計画であり、さらにパーソナル化、マルチメディア化が進むとして、2Mbps程度の伝送速度でデータを双方向にやりとりすることを想定した高速衛星通信システムが提案され、検討されている。
(1) 衛星軌道による衛星通信システムの特徴
移動体衛星通信は、静止衛星を用いた船舶衛星通信サービスとして実用化されたが、静止衛星軌道を用いる通信サービスでは端末の小型化がネックとなり急速に普及するに至っていない。しかし、低軌道衛星通信の実用化計画により携帯電話端末サイズが実現可能となり、数多くの非静止型の衛星計画が提案されている。
非静止衛星通信システムは、低軌道(LEO:Low Earth Orbit,500〜数千km)、もしくは中軌道(MEO:Medium Earth Orbit,数千?q〜20,000km)の衛星を利用したサービスが主となっており、全世界を対象に移動体通信サービスの提供を可能としている。
以下に各種軌道による衛星通信システムの特徴を簡単に記した。