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(2) 海運関連施策の動向

1] 船腹調整事業の廃止、内航海運暫定措置事業の実施

昭和41年に船腹需給の適正化を図るため、船腹調整事業が開始されたが、それ以降、船舶本体の売買に付随するものとして「引当資格(スクラップ権)」が副次的に発生し、一定の金銭的価値を有するものとして取引が行われてきた。引当資格の取引価格はその時々の相場で決定されたが、特に中小零細の内航海運業者は、この引当資格を担保に船舶の新規建造資金を金融機関から調達するなど、引当資格はこれらの内航海運業者の事業経営に深く根を下ろしてきた。

しかし、規制緩和による産業活性化の必要性が強調されるようになってから、「同事業への過度の依存体質が経営基盤強化に向けた構造改善を阻害している」「意欲的な事業者の規模拡大や新規参入を制限することにより業界活性化の支障となっている」などの意見が強くなり、平成10年度より同事業を廃止して、新たに内航海運暫定措置事業が実施されることとなった。

内航海運暫定措置事業は、船腹調整事業廃止以前に建造していた船舶を解撤する際に、内航総連合会が引当資格を買い上げ(解撤交付金を交付)、買い上げに必要な資金については、今後船舶を建造する事業者から徴収する建造納付金を充てるというものであり、事業の収支が合った時点で終了することとなっている。しかし、同事業の実施に伴って、内航海運業者での船舶建造の手控えが生じており、その結果、平成10年度の船舶建造量は大幅に落ち込む見通しとなっているなど、内航船の建造を主体とする中小造船業に大きな影響を与えている。

※ 船腹調整事業

船舶の建造に際し一定の比率(引当比率)による既存船の解撤を求めるスクラップ&ビルド方式による船舶建造方式で、日本内航海運組合総連合会により昭和41年から実施されてきた。平成10年度より同事業を廃止して、新たに内航海運暫定措置事業が実施されている。

2] 国際的な安全基準の強化、環境保全の枠組みづくり

近年起こった船舶事故の多くが人的ミスに起因していることから、国際海事機関(IMO)では、船舶のハード面での安全対策とは別に、人的要因に係るソフト面での安全対策を強化するため、船舶の運行管理体制の国際的規範を定めた「国際安全管理コード(ISMコード)」を平成5年10月に採択した。具体的には、船主等に対して、安全管理システムの策定・実施、船舶・設備の保守手続きの確立等を行わせる一方、船長に対しては、船内における安全管理制度の実施、主管庁等による安全管理システムの審査等を行わせるものである。わが国においても、同コードの実施に向けて実施体制の整備が進められている。

そのほか、船舶からの排出ガス(NOx、SOx等)の国際的な規制に関する検討が行われ、NOxについては、総排出量が規制値以下になるような機関を製造して定期検査を行い、SOxについては、燃料油に含まれる硫黄分を規制することとなっている。

また、平成9年1月のロシア籍タンカー「ナホトカ号」の重油流出事故などを受けて、運輸省では、船舶の安全性の確保等の事故再発防止策、油防除体制の充実等の流出油防止対策などが検討されている。また、油流出事故の被害者に対しては、国際的な油濁損害賠償補償制度に基づいて補償が行われることとなっている。

 

 

 

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