序. 調査の概要
1. 調査の目的
中国地区は、我が国有数の造船・舶用工業の集積地であり、地域における代表的な地場産業として、発展・成長を遂げてきた。造船に適した自然的・地理的条件を背景に、大手から中小まで多くの優良企業が立地し、四国、九州、並びに韓国、中国沿岸部の大連、上海などとともに、世界の船舶の7割近くを生産する「世界の造船センター」を形成するに至っている。
しかし、近年の状況をみると、韓国の大幅な造船設備の拡張、中国の本格的な市場参入などにより、国際競争が一段と激化しており、各社とも生き残りをかけた新たな対応に迫られている。国内においても、製造業の海外進出の進展、物流構造の変革、漁業規制の強化、規制緩和の進展など、造船・舶用工業を取り巻く環境は大きく変化している。
こうした中、とりわけ地域の中小造船業及び舶用工業においては、労働者の高齢化といった構造的な問題に加え、内航船の船腹過剰、内航船腹調整事業の解消に係る問題等により、内航船受注の大幅な減少に直面し、非常に厳しい状況に置かれている。これらの中小造船業及び舶用工業は、島嶼部など特定の地域に集積しているため、地域経済に与える影響も深刻である。
これらの状況を踏まえ、海運造船合理化審議会では、平成8年7月に意見書「今後の造船業及び舶用工業のあり方について」をまとめ、平成9年12月には「今後の造船業及び舶用工業のあり方について(中小造船業対策等)」において、特に状況の厳しい中小造船業及び舶用工業に対して、地域の特性、実情に配慮しつつ、構造改善、新規需要の開拓などの対策が必要であることを指摘している。
中国地区の中小造船業及び舶用工業が、これまでに培ってきた生産基盤を継承し、今後も地域経済において一定の役割を担っていくためには、新たな課題に対応した積極的な取り組みが必要である。そこで、本調査において、中国地区の中小造船・舶用工業が抱える問題点、課題を検証し、これらの活性化に向けた地域ビジョンを策定するものである。
2. 調査の対象事業者・地域
(1) 調査の対象事業者
調査の対象は、中国地区における1万総トン未満の建造及び修繕能力を持つ中小造船事業者及び舶用工業事業者とする。
(2) 調査の対象地域
調査の対象地域は、中国運輸局の管轄区域である鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県(下関市、宇部市、小野田市、長門市、厚狭郡、豊浦郡及び大津郡を除く)の5県である。
ただし、区域内の各地域によって異なる特性を考慮し、必要に応じて、対象地域を「広島県東部地区」「広島県西部・山口県東部地区」「岡山県地区」「山陰地区」に分割して、調査・検討を行うものとする。