【基準】
第3条 対象事業場
この基準は、FRP船を建造する工場(以下事業場という。)を対象とする。
【解説】
第3条 対象事業場
労働安全衛生法、同施行令、同規則の対象は、常時使用する従業員の数が50人を超える事業場の規制が主になっているが、本指導基準はFRP造船業を営む全ての事業場を対象としている。
FRP造船業は3Kの代表的な業種といわれて久しく、作業環境は事業規模が小さくなればなるほどコスト競争力の犠牲にされる傾向があり、決して快適な職場環境を実現しているとはいえないのが現状である。FRP造船業は当然ながら取り扱うFRP材料によって、消防法における危険物としての取り扱い、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質等障害予防規則、粉塵障害防止規則、作業環境測定法、毒物及び劇物取締法等その事業場の規模、取扱い量の大小によって何らかの形で規制を受けており、また、その様な社会環境になりつつある。更にその規制事項は法律、命令、政令、省令、条例と広範囲で多岐にわたり、専門的かつ技術的にも詳細に及んでいる。
本指導基準は大規模(労働者の数が50人以上)のFRP成形事業所の平均的・基本的な事項を抜粋し、小規模のFRP造船所において実施しなければならない必要な法律や規則を整理して基準としたものである。
現在、ハンドレイアップにより成形加工をしているFRP造船業の事業場は、大部分が従業員数3人〜50人未満の規模で、本指導基準の内容に当惑するものと思われる。
しかしながら、FRP造船は世代交代の時代を迎え、若年労働者の確保や新規事業の展開、公害等の難問題を抱え、クリーンで安全な労働環境の確保や環境保全は必須条件になってきている。新素材や新しい複合材料の採用、そして高度な品質と精度、そのための環境の実現は決して安全衛生・作業環境の充実とは矛盾するものではないことを銘記しなければならない。