4 成果
1 今回の調査研究で提案した、機関異常診断の妥当性を確認できた。即ち、クランク軸のねじれ角度を常時監視することにより、シリンダ内ガス圧力の正、異常状態(シリンダ間の出力アンバランス)の監視が可能である。
2 通常では計器に頼らねば認識しにくい5〜10%程度のP.max.低下でも、提案した手法でシリンダ内ガス圧力の異常を他シリンダとの相対比較の中で捕らえることができた。
3 実測されたクランク軸ねじれ角度データは、非常に再現性が良く安定したデータが得られている。これは、本提案による異常診断ではセンサが熱的負荷から開放され、機械約な駆動もなく非接触のため常に安定したセンシングが可能なためである、
4 シリンダ内ガス圧力センサ方式では、各シリンダ毎にセンサを取りつけ、全てのセンサからの信号を解析しなければならないが、今回の調査研究で提案している手法ではクランク軸のねじれ角度信号だけで、全てのシリンダを同時に監視できるので、システムを簡略化する意味から有益である。
5 今後の課題
今回の調査研究では行わなかったが、連接棒とクランクピン軸受けとの接合ボルトの緩み等の重大事故に結び付くような異常状態が発生すれば、クランク軸のねじれ角度には正常状態とは異なる信号が現れることが予測される。このような異常信号はシリンダ内ガス圧力により発生するトルク変動成分に対して極めて小さい値であると考えられる。この信号の検出を可能にするためには今回の調査研究成果に基づき更なる検出装置分解能の向上を図るとともに、ニューラルネットワーク(人工神経回路網)等の高度な診断技術との組み合わせによるシステムの開発が必要であり、重大トラブルを未然に防止するために今後の大きな課題である。