最近のミャンマー情勢
平成10年5月
在ミャンマー日本大使館
1. 内政
内政面では、昨年11月に大規模な政権再編が行われた。88年9月のクーデター以降政権を担ってきた国家法秩序回復評議会(SLORC)は法秩序や治安が十分回復し所期の目的を達成したとして自ら解散し、代わりに国家平和開発評義会(SPDC)が設置された。SPDCはタン・シュエ議長等旧SLORC最高幹部4名を含む計19名により構成されている。また、同時に閣僚、副大臣及び国軍幹部についても大幅な移動が行われた。
アウン・サン・スー・チー女史率いる国民民主連盟(NLD)は、昨年5月の90年総選挙記念集会の開催は政権側に阻止されたが、9月の同党結党9周年記念党大会の開催については開催が認められた。他方、軍事政権とNLDとの対話については、昨年7月にキン・ニュン第一書紀とアウン・シュエNLD議長との会談が実現したが、9月にはアウン・サン・スー・チー女史が招かれていないことを理由にNLD側が政府の呼びかけを拒否したため会談は実現しなかった。本年3月27日の国軍記念日に際して、タン・シュエ議長は、「現在は未だそのような状況ではないが、いずれは国内の政治勢力との一致協力に向けて努力しなくてはならない」と述べたところ、右は対話に向け前向きの姿勢を示したものとして注目された。
新憲法の基本原則を審議する国民会議は、96年3月以降休会中である。また、96年12月に発生した学生デモ以降全国の学校が休講となっていたが、97年8月に小、中、高校が再開された。しかし、大学は依然休講措置が取られたままである。なお、少数民族勢力との和平は、唯一残ったカレン民族同盟(KNU)との交渉再開を模索中である。
2. 外交
外交面では、7月にラオスとともにASEANに正式加盟する等、近隣諸国との間で活発な外交が展開されている。他方、欧米諸国はミャンマーに対し、民主化や人権に関する問題を巡り厳しい姿勢をとっており、EUが昨年3月に特恵関税の停止を決定した他、米国は5月に新規投資を禁止する経済制裁措置を発動した。
日本はミャンマーに対し、従来からの伝統的な二国間関係を基礎とし、民主化及び人権状況の改善を促すため、ミャンマーを孤立化させるのではなく現政権との対話を維持して粘り強く働きかけていく外交方針をとっており、種々の機会を活用して現政権とNLDとの対話の実現や早期民政移管に向けた努力を促している。