その後5年間、破棄状態が続いている状況で、私ども1995年にタイに着いたときも、タイの航空局長から初めぽんと言われたのは、「日本も日米航空交渉で大変だね」と、「何で破棄をしないのですか。あんなもの破棄してしまえばいい」という感じでございます。タイ政府としては、破棄しても何も困らない。困るのは、いわゆる大統領の外交の失敗として、マスメディアにばーっと書かれるアメリカ大統領府は困るけれども、タイ政府としては、不平等条約であるから、破棄して当たり前なんだということでございました。我々としては、非常に心強い味方というか、ある意味で、アメリカとの航空交渉のお手本となるような、そういう動きをタイ側がしているというとらえ方をしていました。
一方で、日本でアメリカとの航空交渉を破棄するとなったら、これは大変なことでございます。その他のいろんな交渉事がございますから、なかなか難しいとは思うんですが、ただ、一方で交渉の仕方として、いわゆる外交上手、アジアの中で独立国をずっと保ってきたタイの、そこに学ぶところというのは非常に大きかったと思います。
ところが、急転直下、1994年に、タイはアメリカとの航空交渉を結び直しました。それに至るまで、かなり日本側として、警備体制をとっていて、というか、タイがあんまり仲良くならないようにとよく見ていたのですが、急遽、ぱたぱたっと話をまとめて、タイ政府がアメリカとの暫定合意に達したわけでございます。そこでタイ政府は、それまでの不平等条約のもとであります以遠権という問題をきれいに片づけまして、ある意味で、国のプライドという意味での不平等かどうかという意味では、不平等ではない条約を、タイ側が先に達成するという状況でした。当時、官邸からも、または、日本の航空局からも、私どもの家のファクスがパンクするぐらい、「現状を伝えろ」ということで話がありました。実際、当時の日米航空交渉の担当審議官は、すぐにタイに来て、タイの航空局長の別荘に泊まりながら、どういう交渉をしたらいいか、どこら辺がアメリカの弱点なのかということを詳細に研究して帰られました。
そういう中で、それだけ航空に関してかなり要請の強いタイ政府なのですが、ないのはやっぱりお金でございまして、空港整備についてもお金がない。ただ、第2空港を進めないといけない。一方で、そういう交渉マターについては、タイ政府というのは非常に頼りになる味方だと。日タイのこういう関係というのはずっと続けていったほうがいい。実は、仲いいようですが、12年ぐらい前ですが、実は、タイと日本の航空交渉も決裂しかかったことがありました。このままにしておくと、今非常に友好関係でございますが、いつどういうことになるかもわからないということで、私個人として、また、運輸省航空局としても、何か経済協力で入っていきたいという、よこしまな動機があったわけでございます。そこで、この空港整備の話が出てきたので、これはちょうどいいなということで、外務省に持ちかけて、外務省も、じゃ、これはやろうということになったわけでございます。
問題はやはり、先ほどから地下鉄でも申し上げましたとおり、全体の額について、これも大体、6割日本が円借款する予定で組んでおりますけれども、4割分のお金が出てこないわけでございます。そこで、我々が初めに検討しましたときは、関西国際空港方式というか、最終的には、株式売却によって、自社資金調達のできる経営主体でやってもらうけれども、とりあえず初めは、政府100%出資という形をとって、その分、円借款をつぎ込みましょうという話をしていたんです。事業スキームが今年度変わりまして、結局、今の空港公団が相当部分出すけれども、民間企業からの出資をかなり多く募る形で、新たな新組織をつくって、ここが運営をしようと。ただ、こちらに51%とか書いてありますけれども、ある意味では、日本の円借款を受けられる組織としては、公的部分から51%以上ないとだめなものですから、それでこういう形にしてもらっているという状況でございます。現在、工事はどんどん進められておりますが、こちらも資金のほうがよくわからないということと、最後の「現状」の2)にございますとおり、現在の空港公団の民営化問題という大きな問題を抱えて、現状はまた不安定な状況になっております。
一方で、日本の円借款した部分を、毎年毎年使い切れないというか、工事自体がおくれているために、デスファースがおくれているといった問題がございますけれども、これからずっと注視していかないといけないプロジェクトだと言われております。多分、建設、もしくは商社さんのほうが絡む時期としては、来年の夏ぐらいが一つのめどになると思いますけれども、その時点で、どういう形の入札が行われるかというのは、我々はちょっとまだ……。私どもはこの6月に帰ってきてしまっていますからわかりませんけれども、私の後任の宮沢というものが、日本大使館で担当させていただいております。現状がそういう状況でございます。
時間のほうもありますので、とりあえずこの2つのプロジェクトについては、こういうご説明でございます。ここまでのところ何かご質問はございますか。
【男竹理事】 ありがとうございました。
もう少し時間がございますので、ご質問があれば、どうぞご遠慮なくお願いいたします。
【質問】 トーニチコンサルタントの粟野と申します。バンコクでは、かなり有名なホープヘルプロジェクトが結成されましたプロジェクトと聞いておりますが、それは今どんな状況にあるんでしょうか。