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第8章 アジア通貨危機と海運

 

第1節 海上輸出入貿易の影響

 

1. 海上貿易の縮小

アジア通貨危機以後の海上貿易の荷動きについて、東南アジアでは、インドネシア、タイなど通貨切り下げにより欧米諸国への輸出競争力がついてきたとはいえ、我が国を含むアジア諸国の消費低迷による輸出の減もあって、従来に比して輸出が20%減、輸入にいたっては40%減というのが相場であった。(現地調査中の現地海運会社及び邦人関係者情報)

 

2. 海上輸送モードの変化

今回の調査対象国であるASEAN諸国では、鋼材、セメントなどが国内建設投資の落ち込みで荷動きは低下。セメントについては国内消費低下分が我が国向けなどの輸出圧力になっている。

穀物は従来の所要消費水準を下回る荷動きをしていると見られる。コメはインドネシアの不足分に対応してアジア域内での一時的な荷動きになる。

コンテナ手当について、欧米航路も含めて何れの内外の船社も、従来先進国から東南アジア諸国に実入りで流れていたコンテナがアジアの消費の低迷によって減少し、また、逆に通貨の切り下げによって輸出競争力を高めた分東南アジアからの輸出が増え、この為コンテナのimbalanceが拡大し、輸出用コンテナの確保のため空のコンテナを東南アジアに回す必要が生じている。我が国等からアジア域内で空コンテナをアジアNICS諸国に回すコストが4600ドルかかる模様。北米及び欧米では空コンテナを回す費用は800ドルと見られている。

 

3. 海運会社経営への影響

インドネシア、タイ、マレーシアのASEAN調査対象諸国の海運は、マレーシアのMISCが航路展開が大きい分アジア通貨危機の影響を受けているが、インドネシアのSamudera Shippingはフィーダーサービス中心ではあるがサービス販路を拡大するなど増益を出し健闘。

 

 

 

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