が指摘され、この方式は、企業内取引あるいは船会社に密接な関連をもつ企業間の取引の場合を除いて、広く一般には受け入れられないであろうという結論に終わった。
5. CMIの電子式船荷証券
(1) 個人キーによる権利の電子的移転
1990年の電子式船荷証券に関するCMI規則に定められている電子式船荷証券は、前記のNCITDの方式と異なり、中央登録機関として海上運送人を利用して伝送され、現行の船荷証券の所持人が有するものと同一の権利を享受する資格をもつ当事者が海上運送人に対して行う電子指図システムに基づいている。海上運送貨物の引渡請求権の移転は、現在は、船荷証券の占有を移転する方法で行われているが、CMI方式では、船荷証券を発行しないで、運送人が同証券の内容を構成する情報を電子的方法によって保存し、暗証番号を認識している権利者の指図に従って譲受人に伝送するという方法で行われる。
1990年「電子式船荷証券に関するCMI規則」は、船舶により運送中の物品の引渡請求権の移転を、従来、船荷証券の占有を移転する方法で行って来たが、これに代えて、船荷証券を発行しないで、同証券の内容を構成する情報を電子的方法により運送人が保存し、暗証番号を認識している現権利者の指図に従って、譲受人に伝送するという方法で行う取引に適用されるものである。本規則は、関係者がこれに従って取引を行う旨を合意した場合にのみ適用される自主ルールである。CMI規則では、運送契約の条件について、運送人がレファレンスをしたときは、その条件は運送契約の一部となることが当事者によって合意され、かつ了解される(第5条)。運送契約は、もし書面形式の船荷証券が発行されておれば強行的に適用されたであろう国際条約または国内法に従うものとする(第6条)。
このシステムでは、書面形式の船荷証券を発行しないで、それと同じ情報を含んでいる電子書類を中央登録機関である海上運送人によって荷送人の電子アドレスに伝送されることから始まり、最終的な譲受人に至る一連の「権利の電子的移転」が行われるが、その要となるのは、権利を表彰する電子式船荷証券の発行・譲渡を可能にする個人キー(Private Key)である。個人キーとは、運送人が荷送人から貨物を受け取った後、国連標準メッセージによって構成される船荷証券に該当する情報を貨物受取メッセージとして電子的方法で荷送人に伝送するときに、一緒に送る秘密コードのことである。個人キーは、数字・文字を組合せたもので、運送人に対する運送品に関連する指図メッセージの真正性と完全性を保証するために使用され(CMI規則第2条f項)、権利が譲渡される度に変わり、そして個人キーの所持人だけが権利譲渡の指図をする目的で運送入との連絡を取ることができる仕組みになっている(同規則第7条a項)。即ち、個人キーが含まれている貨物の受取メッセージ(または譲渡メッセージ)は流通性船荷証券の機能を果たし、個人キーの有効な所持人にのみ貨物へのアクセス(例えば、引渡請求権、運送品処分権の取得)を可能にさせることを意味する(図1を参照)。