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はしがき

 

1. EDI制度手続簡易化特別委員会は、平成10年度の委員会活動として、前年度に引き続いて、流通性書類に関する調査研究に取り組んだ。

2. EDI制度手続簡易化特別委員会は予定通り8回開催し、UN/CEFACT会議出席等によって収集した資料・情報等に基づいて、流通性書類に関する次のような調査研究を行った。すなわち、UN/CEFACTにおける調査研究のフォロー、貿易関連業界におけるEDI化のメリット・デメリットの分析、流通性書類等貿易金融EDI化に関する各業界からの評価、貿易金融EDI化実現のための技術的側面および法的側面からの考察等である。また、BOLEROプロジェクトおよびEDENプロジェクトのパイロットテストの準備が具体化したので、本特別委員会ではこれらのプロジェクトの進捗状況をフォローした。

3. 各業界におけるEDI化の評価は、メリットおよびデメリットの両面から行った。長年にわたり紙の書類の下に構築された商慣習や現行法に照らしてみると、デメリットとして取り上げられた問題点は、EDI化実現の前に厳しく立ちはだかる反対意見のように取られる恐れがあるけれども、グローバルな規模でのEDI化─広義では、電子商取引─への移行はすでに始まっており、逆戻りは許されないのである。むしろ、このようなデメリットを十分に議論して、技術的・法律的に解決する方策を見いださないと、EDI化の実現に向かって大きく前進できないと考える。本委員会において議論されたメリット・デメリットは、もちろんこれに尽きるものではないが、一応、貿易関連業界におけるEDI化計画の参考に資することができれば幸いである。

4. 現行の紙の書類を使用する国際取引慣習は、数世紀にわたって国際商取引に携わった商人の手によって培われたものである。船荷証券を中心とする一組の船積書類と為替手形を使用する国際貿易・決済システムは、隔地取引形態の貿易取引の発展の基盤であり、運送・保険・金融の3支柱によって支えられている。貿易に携わる商人は、伝統的な取引慣習に従うことにより安心して確実に取引を遂行することができるのである。しかし、船荷証券や為替手形の流通性という性質は、商慣習によるのではなく、経済社会の必要性に応じて法律によって付与されたものである。デジタル通信という4番目の支柱を加えた新しい環境条件に適応した法律を直ぐに期待できないので、当事者自治の原則に基づいて、これに代わる法的枠組みを構築しなければならない。この場合、紙の書類による現行の商取引慣行から著しく乖離したシステムは、貿易取引の関係者に不安を与えて、電子商取引への円滑な移行を阻害する結果に終わるであろう。

 

 

 

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